物理性の良い土壌とは?

                                                                    
  物理性の良い土壌と聞いた時、「ふかふかした土壌」やそれなりに「水持ちも水はけも良い土壌」といったことが思い浮かびます。このような土壌にはどのようなことがあるのでしょうか?
○ふかふかした土壌
  100mlの土壌の重さは70~150gぐらいになります。北海道内の土壌はおおよそ100g程度で、比重1の水と同じと考えられます。しかし,その土壌を水に入れた場合、大半は沈んでしまいます。比重が同じであれば沈みはしないのですが、なぜでしょうか?
   100mlの容器に土壌を取った時、びっしり土壌の粒子が詰まっているわけではなく、図-1のように土壌粒子同士の隙間があるわけです。隙間の部分には空気や水が入り、特に空気の場合は、場所は取っても重さはないので土壌粒子が重くても全体が軽くなるのです。このように土壌は土壌粒子の部分(固相)、水の部分(液相)、空気の部分(気相)に分かれており、これらを土壌の三相分布といいます。
   普段土壌の三相分布がどのようになっているのでしょうか? 土壌の固相を除く隙間の部分を孔隙といいます。実はこの孔隙の部分がクッション代わりにもなり、「ふかふか」と柔らかい土壌の感じが伝わるのです。しかし、機械による踏圧、長年の不耕起、有機物の少ない土壌などでは図-1右のように団粒構造が細密化し、孔隙の部分が少なくなってくると,硬い土壌の感じが出てきます。それだけではなくこの孔隙が少なくなってくると植物の根が呼吸するための空気の通りが悪くなったり、根が入り込んでいく隙間がなくなるため根の伸張が悪くなったりします。

物理性の良い土壌とは1.gif

○「水持ち」「水はけ」の良い土壌
   土壌への水の供給は降雨、潅水、地下水により、土壌の隙間の部分に入ってきます。土壌中の水分は、一部蒸散するものを除けば、重力と共に地下へと流れる水(A)、土壌中に残る水(B)の2種類の形態(図-2)を取っています。一つは重力と共に地下へ流れていく「重力水」と呼ばれ、植物があまり利用できない形態です。土壌粒子同士の隙間が大きい所ではこの形態を取り、土壌全体でAが多くなれば「水はけの良い土壌」となります。もう一つは土壌粒子同士の隙間が狭いとき張力によって残る「有効水」と呼ばれる形態で、植物は主にこちらの水を使います。こちらは土壌全体でBが多くなれば「水持ちの良い土壌」となります。しかし、土壌粒子の広い隙間が多すぎても水はたまらないでしょうし、狭い隙間が多すぎても水が抜けずに水はけが悪くなってしまいます。
   「水はけの良い」、「保水性の良い」という言葉は良い土壌の条件となりますが、図-2のように相反する構造に由来するものであることが分かります。それではこの二つの言葉を満たすには、ちょうど図-1左のように土壌粒子自体の大きさが均一でなく、バラバラな方が隙間の大小ができ「水はけの良い」部分と「保水性の良い」部分、両方を兼ね備えることができるのです。土壌にはこのバラバラが大切なのです。

物理性の良い土壌とは