2.オーチャードグラスの特性と品種

 オーチャードグラスは、北海道から九州の高標高地までの広い地域で基幹草種として利用されている牧草です。採草利用や放牧利用、兼用利用されており、北海道ではチモシーに次いで多く利用されています。オーチャードグラスはチモシーよりも刈取り後の再生力に優れ、年間3~4回の収穫が可能なことから、土地面積に制約がある畑作酪農地帯など、集約的に牧草を生産したい場合にも適する草種です。また、近年では、飼料成分を向上させた品種も開発されており、需要が高まっています。

(1)オーチャードグラスの栽培特性
 オーチャードグラスはチモシーよりも出穂始が早く、早晩性にもよりますが、5月下旬から6月上旬に出穂始をむかえます。そのため、オーチャードグラス主体草地を収穫後に、チモシー主体草地を収穫することができ、収穫時期の分散が可能です。利点は、高温・干ばつに強く、再生力に優れ、肥料分の少ない痩せた土地でも生育できることです。近年の北海道では、夏季に高温・干ばつになる年が増えており、高温・干ばつに弱いチモシーが枯れてしまう事例も報告されています。そのため、高温・干ばつに強く、安定的に栽培できるオーチャードグラスが注目されています。

(2)オーチャードグラスの再生力
 オーチャードグラスは刈取り後の再生力が旺盛で、他草種や雑草との競合力が優れるのが特徴です。北海道では強害雑草(シバムギやリードカナリーグラスなど)が増えており、牧草地の雑草割合は全道平均で40%程度と報告されています。
 チモシーは刈取り後の再生が緩慢なため雑草が侵入しやすいですが、オーチャードグラスは再生力が旺盛であるため雑草の侵入を抑制することができ、収量が安定します。写真Ⅰ-2-3は当社で実施したオーチャードグラスとチモシーのシバムギとの競合試験3年目秋の様子です。2010年9月にオーチャードグラスとチモシーの苗を移植し、その株間にシバムギの地下茎を移植しました。オーチャードグラス区ではシバムギが繁茂せず、オーチャードグラス優占状態が維持されました。一方チモシー区では徐々に株元にまでシバムギが侵入し、面状に広がったため、チモシーがシバムギにのみ込まれる状態となりました。

(3)オーチャードグラス栽培時の注意点
 オーチャードグラスの越冬性はチモシーより劣りますが、越冬性が優れる品種を栽培することで道東などの越冬条件が厳しい地域においても利用可能です。また、刈り遅れによる家畜の嗜好性低下が早く、出穂後の消化性の低下速度がチモシーに比べると早くなります。早期収穫が栽培において大切なポイントになりますので、北海道の採草利用では年3回刈りが必要です。
 北海道における葉枯性の病害として、黒サビ病、雲形病、すじ葉枯病などがあります。最も重要な病害は雪腐病であり、特に道東地域で多発する雪腐大粒菌核病が発生した場合、抵抗性が低い品種は大きな被害を受けます。病害への予防として、抵抗性品種を利用することが効果的です。