(1)播種時期
平均気温が安定して15℃を超える時期が目安です。概ね東北南部では5月下旬頃から、関東・中部では5月中旬頃から、九州・四国では5月上旬頃から播種することができます。
平均気温が15℃以下になると生育が止まってしまうため、播種期の終わりは概ね東北南部で7月上旬頃まで、関東・中部で7月下旬頃まで、九州・四国で8月中旬頃までです。ただし2番草まで利用する場合は、関東で6月中旬まで、西南暖地でも6月中旬までには播種するようにします。
(2)施肥管理
ソルガム類は土壌pH6.0~6.5を最も好むとされています。日本の土壌は酸性化している場合が多く、もし栽培予定の圃場のpHが5.0よりも低い場合には、肥料をどれだけ与えても植物が上手くそれを吸収することができず生育不良となりますので、石灰等の土壌改良資材を施用してpH矯正を行います。
施肥管理は、まずは各都府県の施肥基準を参考にします。スーダングラスをロールベール利用する場合は出穂前の収穫が基本ですので、細切サイレージ利用の場合や飼料用トウモロコシの施肥量の3分の2を目安にします。
堆肥の投入量が多い場合は、投入量に応じて窒素とカリを減肥します。ただし、堆肥は一般的に作物に吸収されるまでに時間がかかる為、基肥を全く施用しないと初期の伸長が遅れ、雑草に負けてしまう場合があります。少なくとも窒素5kg/10a程度は基肥として施用するようにします。堆肥の投入量が多すぎると、硝酸態窒素が蓄積し、給与された家畜の健康を害する恐れがあります。堆肥は多くとも5トン/10aまでにします。
(3)播種量および播種方法
①播種量
スーダングラスは、使用できる除草剤が限られることと、茎を細く仕上げて乾きやすくする為に、播種量は多めにします。散播で8kg/10aが目安ですが、種子が小さな品種は6kg/10aでも十分です。また、条間30cm以下で密条播する場合は、上記播種量から2~3割を減じます。
②播種方法
散播する場合は、ライムソワーやブロードキャスターといった肥料散布機を使用します。均一に播くのが困難な場合は粒状石灰等で増量します。散播した後はロータリー等でトラクターの轍が消えるか消えないかくらいに浅く覆土し、必ず鎮圧を行います。牧草用の播種機械を流用することも可能です。
(4)雑草管理
施肥管理と播種をしっかりと行い、雑草よりも早く出芽・生育させることが基本です。播種量が多い為、除草剤を使用しなくても雑草に負けることは少ないですが、どうしても雑草の多い圃場の場合には、登録のある土壌処理剤をできるだけ播種後出芽前に散布します。
他タイプのソルガムとは異なり種子が小さい為、イネ科雑草にも効果のある除草剤は薬害を生じる可能性があるので使用は控えます。
(5)アブラムシ対策
ヒエノアブラムシは7月中~下旬から発生し、ソルガム類に特異的な被害をもたらします。下位葉から枯れ上がり、進行するに従い脱水症状を呈し、甚だしい場合は枯死します。生育初期や再生直後の場合は、ソルガムに登録が取れている「オルトラン水和剤」(1,000倍希釈、収穫30日前まで)、「モスピラン顆粒水溶剤」(6,000倍希釈、収穫45日前まで)を散布します。草丈1.5m以上で多発した場合は、ただちに刈取りを行ない、再生草に期待します。また、再生草が期待できない9月に被害が発生した時は、早期に収穫し、イタリアンライグラス等への切換えることが賢明です。(6)収穫期
スーダングラスは出穂すると急速に消化性が低下していきますので、出穂前の収穫が基本です。ただしあまりに早い段階で収穫してしまうと、硝酸態窒素の濃度が高く、給与された家畜の健康を害する恐れがありますので、草丈(葉を伸ばした状態の高さ)で1.5m以上、堆肥の投入量が多めの場合は草高(自然な状態での高さ)で1.5m以上を目安に収穫するようにします。春播きした際の1番草の収穫までの日数の目安は、極早生品種で50~60日、早生品種で60~70日、晩生品種で70~80日程度です。
スーダングラスの出穂前の水分は80~85%と高いため、ロールベールサイレージの適水分である60%前後とするためには予乾が必要です。予乾期間が長引くと、反転作業の為に何度も機械で刈り株を踏んで再生が悪くなってしまう他、予乾中に降雨に見舞われると土砂の混入やカビの発生で発酵品質が悪くなってしまう為、できるだけ稈が細く乾きやすい品種を選ぶのが良いでしょう。稈が太い品種を使用する場合は、モアコンディショナーを利用することで予乾期間を短縮することができ、また、サイレージ用乳酸菌を添加すれば、多少の高水分であっても良質なサイレージ発酵が期待できます。
※ 本文中の殺虫剤は、2023年8月現在農薬登録のあるものを掲載しています。