泌乳生理について

   牛乳の成分として重要な乳脂肪の材料は、全身に蓄えられている体脂肪やルーメンから入ってくるVFAです。体脂肪はそのままでは使えず、一度脂肪酸に分解されます。乳腺細胞はVFAや脂肪酸を取込んで乳脂肪を作ります。また、乳蛋白質も、乳腺細胞が血液から流れてくるアミノ酸から合成しています。乳糖も同じように、血液中に流れているグルコースから乳腺細胞によって合成されます。
   このように、牛乳を生産するためには血液の循環が不可欠であり、1kgの牛乳を作るためには、およそ500リットルもの血液の循環が必要なのです。

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①乳頭洗浄などの物理的刺激を与えます。20~30秒持続していることが必要です(プレディッピングや前搾り)。
②乳頭への刺激が、脊髄を通って大脳の視床下部へ伝わります。
③下垂体後葉からオキシトシンが分泌され、血液中に流れ出ます。一度オキシトシンが放出されると、しばらくはオキシトシンの放出は起きません。
④血液中に流れ出たオキシトシンは、乳房(乳腺)に到達し、乳腺胞の周り(筋上皮細胞)をぎゅっと収縮して乳が搾れるようになります。

<オキシトシン>
   乳汁の分泌を促進させるホルモンで、これが出なければ乳腺槽に貯まった牛乳を搾ることは出来ません。また、オキシトシンの効果は永久に続くわけではありません。搾乳刺激が始まっておよそ1分後には血中のオキシトシン濃度がピークに達します。その後、濃度は横ばいとなり、そして減少し始めます。それはわずか5分程度です。この限られた時間の中で搾乳を行わなければ、過搾乳の原因となり、乳房炎になる危険が高まります。

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<アドレナリン>
   アドレナリンとは、血液循環に分泌される第二のホルモンです。このホルモンは乳牛にストレスがかかったときに分泌されます。アドレナリンは、血管を収縮させ、オキシトシンの効果を減退させます。搾乳時に牛が驚いたり、緊張したり、痛い目にあったりすると交感神経が刺激され、アドレナリンが放出されます。すると、乳腺胞に届くオキシトシン量が少なくなり、血管の収縮と血流の減少が起きて射乳量が減少します。したがって、搾乳時は普段より牛の扱いに気を配り、ストレスを軽減することが大切であり、牛を緊張させないよう搾乳者、搾乳手順を一定にすることが大切です。

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