良質な自給飼料を生産するには草地管理やサイレージ調製の技術が大切ですが、品種の選定や利用目的、栽培条件にあった混播組み合わせを考えることも大切なポイントの一つです。牧草の混播設計は気候条件や利用方法によって様々ですが、当社が推奨する混播例を以下にご紹介します。
(1)チモシー早生品種の混播例
チモシーは一般に早晩性が早くなるにつれて刈取り後の再生力が優れる傾向にあります。また、早生品種では2番草においても節間伸長茎(出穂茎)が見られることが多く、その程度は品種によって異なります。
このような特性を加味したチモシー早生品種の混播例を表 3-1に示しました。表中のAはアカクローバ早生品種との混播例ですが、マメ科牧草が優占しやすい条件(春播きや干ばつになりやすい草地など)では、表中のBのようにより生育の穏やかなアカクローバ晩生品種を組み合わせると良いでしょう。一方、マメ科が衰退しやすい条件(冷涼地域など)では、マメ科の混播量を表 3-1の数字に0.1kg/10a程度増やす場合もあります。
クローバ類との混播のほかに、ギシギシに適用がある除草剤「ハーモニーDF」の普及により、表中のCのようにアカクローバの代わりにアルファルファを混播するケースが増えてきています(「ハーモニーDF」を散布した場合、アカクローバは枯死しますが、アルファルファは枯死しません)。
マメ科牧草は、たん白質やミネラル含量が高く、共生する根粒菌の働きによって土壌に窒素を供給する役割もあります。シロクローバと共生する根粒菌が固定する窒素量については、栽培環境によって大きく変動しますが、10~20kg/10aといわれています。北海道内の酪農生産者が化学肥料によって施肥する年間窒素量は約7kg/10a前後ですので、およそ2倍の窒素量が根粒菌によって固定されていることになります。さらに、匍匐茎で広がる特性から、草地にできる裸地をうめて雑草の侵入を防ぐ効果もあります(写真 3-1、3-2)。このような特性から、表中のA~Dのように、シロクローバは様々な混播組み合わせの中で欠かせない存在となっています。
(2)チモシー中生・晩生品種の混播例
中生や晩生品種は、早生品種と比較して刈取り後の再生力が劣る傾向にあります。そのため、生育が最も穏やかな小葉型シロクローバとの混播が適しています。混播例を表 3-2に示しました。この場合も、条件によってマメ科の混播量を加減する必要があります。アカクローバ晩生品種との混播は、チモシーの中生、中生の早のどちらのタイプとも可能です(表中A)。早生タイプのアルファルファとの混播については、再生力の優れる中生品種との混播が推奨されます(表中B)。
シロクローバについては、小葉型との混播例を示していますが、生育が緩慢な特性がある中葉型の品種でもチモシー中生・晩生品種との混播は可能です。
混播の組み合わせを間違えると、マメ科牧草が極端に優占してしまう場合もありますので、注意が必要です(写真 3-3)。
(3)オーチャードグラスの混播例
オーチャードグラスの混播例を表 3-3に記しました。オーチャードグラスはチモシーよりも競合力が強いため、アカクローバ早生品種およびシロクローバ大葉型との混播(A)、またはアルファルファとの混播が適しています(B)。オーチャードグラスはマメ科牧草に抑圧されることは少ないですが、チモシーと同様に条件に応じてマメ科牧草の混播量を加減する必要があります。下繁草であるメドウフェスクを上繁草であるオーチャードグラスと混播することにより、草地の空間を有効活用することができ、経年化により株化しやすいオーチャードグラスの特性をカバーすることが期待できます(D)。
(4)アルファルファ主体の混播例
アルファルファを主体とした混播例を表 3-4に示しました。
チモシーとの混播例はAのとおりです。アルファルファは2番草以降の生育が旺盛なことから、チモシーは早生品種の利用が適しています。
オーチャードグラスの混播例はBの通りです。アルファルファの刈取り適期は6月中旬前後であるため、オーチャードグラスは晩生もしくは極晩生品種が適しています。
※ 本文中の除草剤は、2023年8月現在農薬登録のあるものを掲載しています。