1.はじめに 2. 乳牛の適温 |
3.暑熱の影響 |
図1に北海道酪農検定検査協会の道内平均搾乳牛1頭平均乳量(平成22年、23年)を示しました。このグラフからもわかるように、平均乳量が1番低くなったのは、1番暑かった8月ではなく2年続けて11月であることがわかります。また、その低下割合はより暑さが厳しかった平成22年のほうが顕著であったことがわかります。11月に平均乳量が低い原因のひとつとして、暑熱時に乾乳だった分娩直後乳量が低かったことが挙げられます。分娩直後乳量が低いと、全体的に泌乳曲線が低くなるため、徐々に平均乳量も低くなってきます。暑さが過ぎたのになかなか乳量が増えずに、むしろ減っていくために、暑さの影響は秋に来ると感じるのではないでしょうか。 4. 繋ぎ牛舎での事例 |
写真2 ビニールカーテンによる飼料庫から入気の閉鎖 トンネル換気の陰圧によりビニールが引っ張られている。 |
また、入気は牛舎奥の飼料庫から入気する方法を取っていましたが、これでは入気量が少なかったため、牛舎の奥端の窓二つを全開することにより、入気量を確保しました。図2は、それぞれの牛が繋がれている場所で、どれくらいの風速があるか風量計で測定したものです。 |
図2を見てもらえばわかるように、牛舎途中の飼料庫をビニールカーテンで閉めることにより、牛舎全体の風速が強くなっていることがわかります。それにより、風速はどの牛のいるところでもおおよそ1m/秒を確保出来るようになりました。 トンネル換気の改善に加え、晴れた日に牛舎内の温度が高くなるので、窓に遮光ネットを付けるようにしました(写真3)。遮光ネットは一枚の窓分ですとホームセンターで200円程度から購入出来ます。安価な暑熱対策として、非常に効果的です。 |
写真3 遮光ネット |
これらの暑熱対策により、夏以降の管理乳量は一昨年(平成22年)と比較して、昨年(平成23年)のほうが高く推移しました(図3)。 |
管理乳量:2産次・検定日数150日・4月分娩を基準としてのSCM乳量補正(全固形分を考慮しての補正)した乳量。 条件を揃えて補正を行い、飼養管理の良し悪しを判断する乳量として用いられる。 |
5. フリーストールでの事例 |
写真4 乾乳牛舎の大型ファン |
乾乳牛舎奥には換気を行うためのファンも付いています。乾乳舎は対頭式であり、大型ファンにより飼槽に強い風が流れるため、暑熱時期の食い込みも落ちませんでした。 搾乳牛舎にはリレー式換気を導入しました(写真5)。 |
写真5 リレー式換気 |
搾乳牛舎においてのリレー式換気の優先順位は、①給飼通路の上、②牛舎中側にあるストールの列の牛、③牛舎の外側にあるストールの列の上とされています。信田牧場では、給飼通路の上と3列シングルフリーストールの真ん中のストールの上に設置しました。 ファンの間隔はたいていの牛舎では2間(3.6m)間隔で牛舎の柱が立っているので、その柱の2本に一台、もしくは3本に一台の設置になっているようです。推奨されているのは、ファン直径の8~9倍の間隔です。信田牧場では柱3本に一台のファンが設置されています。 図3に一昨年(平成22年)と昨年(平成23年)の搾乳牛平均乳量と管理乳量の比較を示しました。 |
平成22年は暑熱が厳しかった8月からの乳量の減少が大きかったです。平成23年の搾乳牛平均乳量は8月以降も維持していきました。平成23年の管理乳量に至っては、9月以降むしろ増加傾向にありました。これは8月以降の分娩が少なかった割には平均乳量が維持出来たことが大きいです。すなわち、平成23年は暑熱の影響があまり受けなかったことと、乾乳牛の暑熱対策を行うことにより、分娩直後乳量、ピーク乳量がスムーズ伸びたことが、例年のような8月以降の乳量の落ち込みを無くしたと思われます。 6. おわりに |