ケトーシスの原因と対策

1. ケトーシスという病気
 エネルギー不足時に多量に体脂肪が分解されるか、酪酸発酵サイレージを多量に採食したために、血液中のケトン体濃度が上がっている病態をいいます。症状は元気喪失・食欲低下・乳量減少、反芻や消化管運動が減少します。特に採食量が落ち込み、急激に痩せるのが、ケトーシス発症牛の特徴です(写真1)。

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2. 潜在性ケトーシス
 潜在性ケトーシスとは、上記のような症状が見られる臨床性ケトーシスとは異なり、『ケトン体濃度は上昇しているが、症状が見えない状態』です。泌乳初期の牛は、25~50%が潜在ケトーシスであるともいわれます。
 症状は見えませんが、乳量の減少や、他の疾病を引き起こすので、被害は甚大です(1頭1日あたり1~4ℓの乳量損失があるといわれています)。症状が見えない潜在性ケトーシスを予防する事が、ケトーシス対策の目標となります。

3. ケトーシスの発生経路
 ケトーシスの発生経路を図1に示します。
 牛はエネルギー不足に対応するために、体脂肪を分解してエネルギー源として利用します。体脂肪は、NEFA(遊離脂肪酸)として血中に分泌され、肝臓で分解される過程でアセチルCoAという物質になります。アセチルCoAは、ルーメンから吸収されるプロピオン酸や、血中のグルコースが十分にある場合は、オキサロ酢酸と結合して代謝され、エネルギーとして利用されます。しかしプロピオン酸や血中のグルコースが少なく、オキサロ酢酸が不足している場合には、正常な代謝が行われず、ケトン体として血液中に放出されます。
 この他、酪酸発酵したサイレージに含まれる酪酸は、第一胃及び第三胃の上皮に吸収されてβハイドロキシ酪酸(ケトン体の一種)という物質に変換されます。こうして血中のβハイドロキシ酪酸含量が高まることによっても、ケトーシスが発生します。牛が1日100g以上の酪酸を採食すると潜在性ケトーシスの、1日200g以上の酪酸を採食すると臨床性ケトーシスの危険性が高まります。

fig1

4. 3つのタイプのケトーシス
 ケトーシスは表1に示すように、3つのタイプに分けられます。それぞれ原因と対処方法が異なりますので、どのタイプであるかを突き止める事が重要です。

t1
type1
type2

f2

 タイプ1とタイプ2のケトーシスを予防するために共通して言えることは、分娩前後の乾物摂取量を落とさないようにする、ということです。

dmi
type3
raku

 5. 給餌体系別に心配されるケースの例は?
表3に、飼料給与体系別に、発症が心配されるケトーシスのタイプとケースについて簡単にまとめたものを示します。

t3

 6. ケトーシスの対処方法
(1) エネルギー供給を行う : 急速に代謝されるエネルギー源である、飼料用グリセリンの給与が効果的です。グリセリンの給与は、インシュリンレベルを高め急激な体脂肪の動員を抑制します。また、代謝経路を活性化し、血中のケトン体濃度の上昇を抑えます。分娩前後の2週間、グリセリンを500ml/日給与する事が奨められています。グリセリンの使用を検討される場合は、当社ではグリセリン分を85%含む『グリセリン 85S』を扱っておりますので、ご相談ください。

(2) バイパスコリン製剤、ナイアシン・ビオチンなどのビタミンB群の給与 : コリンは肝臓に蓄積した中性脂肪をエネルギーとして利用しやすくする作用を持ち、ビタミンB群は代謝を高める効果があることが明らかとなっています。当社が販売しているサプリメント『ターボライザー20』は、バイパスコリン、ビタミンB群を豊富に含有している商材です。

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