2. 潜在性ケトーシス 潜在性ケトーシスとは、上記のような症状が見られる臨床性ケトーシスとは異なり、『ケトン体濃度は上昇しているが、症状が見えない状態』です。泌乳初期の牛は、25~50%が潜在ケトーシスであるともいわれます。 症状は見えませんが、乳量の減少や、他の疾病を引き起こすので、被害は甚大です(1頭1日あたり1~4ℓの乳量損失があるといわれています)。症状が見えない潜在性ケトーシスを予防する事が、ケトーシス対策の目標となります。
3. ケトーシスの発生経路 ケトーシスの発生経路を図1に示します。 牛はエネルギー不足に対応するために、体脂肪を分解してエネルギー源として利用します。体脂肪は、NEFA(遊離脂肪酸)として血中に分泌され、肝臓で分解される過程でアセチルCoAという物質になります。アセチルCoAは、ルーメンから吸収されるプロピオン酸や、血中のグルコースが十分にある場合は、オキサロ酢酸と結合して代謝され、エネルギーとして利用されます。しかしプロピオン酸や血中のグルコースが少なく、オキサロ酢酸が不足している場合には、正常な代謝が行われず、ケトン体として血液中に放出されます。 この他、酪酸発酵したサイレージに含まれる酪酸は、第一胃及び第三胃の上皮に吸収されてβハイドロキシ酪酸(ケトン体の一種)という物質に変換されます。こうして血中のβハイドロキシ酪酸含量が高まることによっても、ケトーシスが発生します。牛が1日100g以上の酪酸を採食すると潜在性ケトーシスの、1日200g以上の酪酸を採食すると臨床性ケトーシスの危険性が高まります。
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