1.チモシーの特性と品種

 チモシーは北海道において最も広く利用されているイネ科牧草です。また、北海道以外では北東北や本州以西の高標高地帯などで主に利用されています。チモシーが北海道で広く利用されている主な理由は、耐寒性が優れ、雪腐病に強く永続性に優れていること、刈り遅れても嗜好性が低下しにくいことなどが挙げられます。チモシーは北海道における主要な草種であることから、品種数も多く、極早生から晩生まで早晩性が異なる品種があります。近年では、飼料成分を向上させた品種も開発されており、自給飼料の生産に大きく貢献しています。

(1)チモシーの栽培特性
 北海道の基幹草種であるチモシーは、適期に収穫できるよう極早生~晩生まで、幅広い早晩性の品種が育成されています。早晩性の違いによって再生力も異なるため、採草利用では、極早生・早生が2~3回刈り、中生・晩生は2回刈りが一般的です。また、チモシーは1番草の収穫量が多く、年間乾物収量の約60~70%を占めています(図Ⅰ-1-1)。そのため、良質な自給飼料を確保するためにも、1番草を適期に刈取ることが重要です。
 チモシーの1番草の収穫適期は出穂始~出穂期(50%出穂)であり、栄養価が高く、収量を確保でき、草地を傷めずに収穫することができます。

 チモシーの短所として播種後の初期生育が緩慢なこと、刈取り後の再生が遅いこと、干ばつや高温に弱いことなどが挙げられます。チモシーは初期生育が緩慢であるため、播種前後の雑草対策が重要です。グリホサート系除草剤による播種前雑草処理(播種床処理)や、掃除刈りなどを行うことが雑草対策では有効です。詳しくは「除草剤の利用方法 2.更新時の雑草対策について」をご参照ください。また、チモシーは刈取り後の再生が緩慢なため、チモシー主体で混播する際には、混播相手との競合力のバランスや播種割合が重要です。播種割合に関する詳細は「草地更新 3.採草地の混播例」、牧草の競合力に関する詳細は「草地更新 6.牧草の競合力と混播組み合わせ」をご参照ください。
 干ばつや高温になりやすい地域では、チモシーよりも干ばつ・高温に強いオーチャードグラスなどの栽培が適しています。

(2)耐倒伏性
 チモシーはオーチャードグラスと比較すると倒伏に弱く、品種改良においては耐倒伏性が重要な育種目標となっています。そのため、品種によって耐倒伏性の強弱は異なりますが、近年の品種は耐倒伏性に優れる傾向があります。
 倒伏が発生すると、収穫ロスや蒸れによる裸地が発生する場合があります。また、材料草が高水分になりやすく、サイレージの発酵品質が低下する可能性があります。倒伏が懸念される場合には、耐倒伏性に優れる品種の利用や適正な肥培管理が重要です。

(3)チモシーの重要病害
 チモシーの葉枯性の重要病害として、チモシー斑点病が挙げられます。チモシー斑点病は冷涼多湿の条件で発生しやすく、北海道では道東地域に多い傾向があります。チモシー斑点病は冷涼多湿条件のほか、窒素などの肥料成分の不足によって発病が助長されます。チモシー斑点病の対策として、適切な肥培管理を行うことが有効であり、また、斑点病抵抗性が優れる品種の利用も有効です。