メドウフェスクは道東地域を中心に利用されているイネ科牧草です。採草利用の場合、北海道の基幹イネ科牧草のチモシーやオーチャードグラスに比べて年間収量は劣りますが、再生が良好で季節生産性が平準であるため、放牧用の牧草として主に利用されています。メドウフェスクは、ペレニアルライグラスよりも越冬性が優れており、ペレニアルライグラスが利用できない道東地域においては、メドウフェスク主体での集約的な放牧利用のほかに、採草地の栄養価向上や干ばつなどのリスク回避のために補助草種としても利用されています。
(1)メドウフェスクの栽培特性
メドウフェスクは越冬性が優れるほか、土壌条件での適応性が広く耐干性や耐湿性にも優れます。また永続性も優れており、長年更新していない古い草地でも過去に混播したメドウフェスクが残っていることも多く、不良環境にも耐えうる丈夫なイネ科牧草といえます。
メドウフェスクの越冬性はチモシーに次いで優れており、オーチャードグラスと同等~やや優れています。そのため、越冬条件が厳しい道東地域などにおいても利用が可能です。写真 4-2は道東におけるメドウフェスクとペレニアルライグラスの早春の萌芽の様子です。メドウフェスクは萌芽が良好で、越冬性に優れていることが分かります。
メドウフェスクは環境適応性が高いため、排水性が悪い圃場などでも利用可能であり、適応範囲が広い草種です。写真 4-3はオーチャードグラスとメドウフェスクを混播した圃場の滞水部分ですが、滞水したところではメドウフェスクのみが定着しており、耐湿性に劣るオーチャードグラスは定着できませんでした。
(2)メドウフェスクの再生力
メドウフェスクの再生力は、ペレニアルライグラスやオーチャードグラスと比べると同程度~やや劣りますがチモシーより優れています。また、品種間差はありますが、チモシーやオーチャードグラスよりも飼料成分が優れる傾向があります。そのため、飼料成分の改善を目的に、越冬条件が厳しい地域では、オーチャードグラスやチモシーにメドウフェスクを混播する事例が増えています。
一方チモシーと混播する際には混播量に注意が必要です。メドウフェスクはチモシーより再生力が良好で競合力が強いため、播種量が多いとチモシーを抑圧する危険性があります。チモシー主体草地にメドウフェスクを混播する場合は、0.1~0.2kg/10a程度(チモシーは2.0kg/10a程度)が適当です。
(3)メドウフェスクの初期生育
メドウフェスクは初期生育も良好であり、既存草地への追播利用にも適しています(写真 4-4)。写真 4-5は、各イネ科牧草の初期生育を比べた写真です。ペレニアルライグラスには劣りますが、初期生育が良好であることが分かります。