TMR飼養:栄養管理面の留意点1.事前の情報収集

TMRは・・・、
   Total Mixed Rationの頭文字をとった略で、日本語では完全混合飼料と訳されます。“家畜の要求する飼料成分を混合したもので、家畜がそれらの構成成分をより分けて摂取することができないほど十分混合され、いくつかの栄養水準に合わせて作られ、不断給飼されるもの”と定義づけられており、乳牛の高泌乳生産に要求される乾物摂取量および飼料効率を最大限に高めることが可能な飼料給与方式です。

1.事前の情報収集
・ TMRの飼料構成や栄養濃度を設計・改善する、または、設計・改善しようとする場合、事前
  情報なくして実施できません。以下ポイントが、備えておくべき事項と捉えて下さい。

TMR飼養事前情報1

①飼料の品質、分析値について
 TMRに使用する全ての粗飼料は、分析値が必要となります。特にサイレージは、水分変動
   が大きい場合があるため都度確認することが重要です。使用粗飼料の水分変動が、TMR全
   体の栄養濃度に影響を与えることを認識しなければなりません。また、サイレージに関して
   は、発酵品質や変敗の有無などにも注意が必要です。
 濃厚飼料(単味類)においても、分析値を用いることに留意すべきです。その中で、穀類飼料
   はデータベースをかなり応用できますが、大豆製品は加工内容によって、成分値に差がある
   点を考慮しなければなりません。また、同じ品目であっても、国産品と輸入品とでは成分によ
   って差が生ずる場合があるため、分析値で確認することを勧めます。
②現状の牛群状態の把握について
 牛群構成:現状のTMRが対象となる牛群に合致しているか、群分けの場合、構成内容に変
   化がないか、などをチェックしておき、TMR設計変更の参考とします。
 糞の状態:同一のTMRを採食している中においても、糞の状態にバラツキがないか、あると
   するならばその要因・要素は何かをチェックします。また、該当する群で糞の形状が適当かど
   うかも確認します。
 BCS変化:牛群内のBCSのバラツキは許容範囲にあるか、また、その群の泌乳ステージに
   妥当なBCSであるかどうかを確認します。
 各群の乳量、乳成分変化:採食しているTMRが期待通りに反応しているかどうか確認する必
   要があり、乳量と乳成分の推移・変化を把握しておくことが肝要です。
 疾病発生状況:特定の疾病が集中していないか、また、傾向がないかなどを確認します。
③現状のTMR状態の把握
 残飼量:残飼量を確認する目的は、TMRの総量のチェックならびに想定したDMIのチェック     をするためです。
 発熱、変敗の有無:この点は、直接手で触ってみて確認しますが、発熱や変敗が認められた
   ならば、そのTMRは想定する内容(乾物、栄養成分等)を摂取できない恐れがあります。
 選択採食の有無:残飼TMRの形状から選択採取の有無を確認します。または、調製直後の
   TMRと残飼とを比較して内容物に差がないかを確認します。内容物に差が生じているとした
   ら、明らかに選択採食していることとなります。
④牛舎内環境常態の把握
 気温、湿度:これらの点はDMIの制限要因となり、実践的に牛の行動と人の感覚で判断して
   よいでしょう。人が暑いと感じる場合は、牛も間違いなく暑いと感じています。
 換気の状態:換気は、牛舎内の空気の動きや、空気が動かない場所がないかなどを確認し
   判断します。
 牛床の状態:牛の横臥休息場所の快適さもDMIに影響します。敷料の状態、乾燥程度、ネッ
   クレールの高さ、スペースの有無などから判断します。
 飼槽、水槽:この項目は、“清潔度合い”の適否をまずチェックし、水槽においては、水量にも
   注意します。

TMR飼養事前情報2

 ⑤ミキサー計量器の確認
 TMRは、それぞれの飼料を計量・混合して成立するものです。使用量の把握・精度なくして
   は、しっかりしたTMRとなりません。定期的な計量器確認は不可欠です。また、量的管理を
   行うことはムダの削減にもなります。