サイレージの二次発酵は、古くから問題視されていながら、いまだに現場で散見される課題です。サイレージが二次発酵してしまうと、発熱に伴ってサイレージの栄養価が下がり、嗜好性も低下して、十分に食込めなくなります。また、TMRの発熱はサイレージに含まれている酵母などの雑菌が原因となるので、サイレージの二次発酵はTMRの品質にも影響します。特に粗飼料の食い込みが落ちてくる暑熱時期に、サイレージが二次発酵してしまうとその影響は更に大きくなります。そこで、サイレージの二次発酵を正しく理解していただくとともに、その対策を紹介させていただきます。 サイレージの二次発酵とは |
乳酸は他の酢酸や酪酸に比べてpHを下げる力が強いので、酪酸菌を抑えることは出来ますが、耐酸性酵母には効果がありません。一方、酢酸や酪酸はpHを下げる力は弱いものの、酵母やカビには強い抗菌作用を示します。一般的にサイレージ中の有機酸含量は、乳酸発酵が進むとサイレージ中の酢酸や酪酸含量は少なくなり、乳酸が少なくてpHが下がらなければ、酢酸や酪酸含量は高くなります。これらのように、酪酸菌と酵母・カビは、生育環境、有機酸に対する感受性が異なるので、酪酸発酵と二次発酵を同時に抑制するのは非常に難しいのです。これで乳酸発酵しやすいトウモロコシサイレージで二次発酵が問題になる理由もご理解いただけると思います。 |
サイレージ調製時に出来る二次発酵対策 |
②踏圧(何で踏むか?) ③踏圧(薄く広げて踏む) |
④踏圧(踏圧時間を確保する) ⑤夏場開封用の間口の小さいサイロを作る ⑥ビニール中仕切り |
⑦乳酸菌 |
上記サイレージを25℃環境下で、サイレージの温度が30℃になるまでの時間での比較で、二次発酵の程度を比較しました。サイマスターSPを添加すると、温度上昇までの時間が非常に長くなり、二次発酵を抑制することがわかります。酢酸が増えることで、サイレージは若干酸っぱくなりますが、二次発酵でお困りならサイマスターSPが最適です。 |
サイレージ調製後に出来る二次発酵対策 ②開封後のサイレージ取り出し面に使用する二次発酵抑制資材 |
サイロ消防団は、プロピオン酸カルシウムを溶かした液状の商品です。プロピオン酸には酵母やカビに対する抗菌作用があるので、バンカーやスタックサイロの取り出し面1m2あたりサイロ消防団を200mlの割合で噴霧することで、二次発酵の進行を遅らせる効果があります。バンカーサイロのトウモロコシサイレージにサイロ消防団を処理して、3日後の酵母菌数を調査したところ、無処理に比べて菌数は1/30でした(下図)。また、スタックサイロのチモシーサイレージでも調査したところ、処理から2日後に写真左側の無処理には中段に白いカビが点在していましたが、右側のサイロ消防団処理にはカビは発生していませんでした(下写真)。 |
サイロ見張番は、カラシ油の香気成分(アリルイソチオシアネート)の抗菌作用を活用した商品です。中にカラシ油成分を浸み込ませたビーズが入った分包になっていて、この分包から放出されるカラシ油ガスによって、酵母・カビの増殖を抑制し、二次発酵を遅らせることができます。サイレージ取り出し面1m2あたりサイロ見張番を2個の割合で配置し、ガスを充満させるためにシートをかけます。塔型、地下、半地下タイプのサイロで使いやすい商品になります。タワーサイロのトウモロコシサイレージ(試験期間8~9月)で効果を検討してみました。サイレージ取り出し直後の取り出し面が、1日空気にさらされることで二次発酵が進み、無処理区はpH3.7からpH4.4まで上昇して明らかに変敗していますが、サイロ見張番処理によってpHの上昇が抑えられ、変敗が抑制されていました(下左図)。このサイロ見張番の特徴を利用して、TMR飼料の発熱抑制を検討しました。TMR飼料はミキサーにより混合するので、空気が入り込んで発熱しやすくなりますが、サイロ見張番を処理することで、発熱が抑制されます(下右図)。実際にTMRセンターから農家に供給するTMR飼料にサイロ見張番を処理して、給与するまでの変敗を抑えている事例もあります(下写真)。 |