7.アルファルファの特性と品種

 アルファルファはたん白質やミネラル含量が高く、また嗜好性が優れることから、アメリカを中心に世界中で広く利用されている多年生マメ科牧草の一つです。6月下旬頃に開花始を迎えます。日本では多くのアルファルファ乾草が海外から輸入されており、高泌乳牛に対応した高栄養価牧草として利用されています。北海道では、以前はヨーロッパやアメリカから導入した品種が利用されていましたが、近年は北海道で育種された寒地適応性の高い品種が普及しています。日本でのアルファルファの品種改良の多くは、北海道農業研究センターおよび当社で行われています。
(1)アルファルファの栽培特性
 環境適応性として、アルファルファはアルカリ性のやや乾燥した土壌を好み、生長につれて直根で土壌の深くまで根が入るため、干ばつに強い特性を持っています。一方で、耐湿性は弱く、日本のような雨が多く湿潤で酸性土壌が多い環境では作りにくい牧草です。

 日本で栽培する場合は、酸性改良(カルシウム資材の施用)を中心とした土壌改良や圃場選定が大切なポイントとなり、圃場選定にあたっては、排水良好で肥沃な土壌であることに留意します。また、多回刈りをするとアルファルファの株が衰退していくため放牧では利用できず、採草利用が主な用途です。
 再生力は緩慢なものから旺盛なものまであり、それに応じて混播利用するイネ科牧草も代わってきます。既存品種は生育旺盛なタイプであり、チモシーの早生品種やオーチャードグラスなどとの混播で利用されてきました。一方で、生育が旺盛すぎるためにチモシーの生育を抑圧してしまう事例もあります。
(2)アルファルファの越冬性
 越冬性はアルファルファの永続性を左右する大きな要因の一つです。雪腐黒色小粒菌核病などによって、アルファルファが冬季の間に被害を受けることがあります。また、土壌凍結地域においては凍上害による断根が生じ、冬枯れが発生することがあります。しかし、越冬性に優れる当社育成品種は、凍上害によって主根が切れたとしても横方向に根を伸長させて生育し、冬枯れリスクを軽減させている事例があります(写真 7-2)。現在では品種育成が進んで越冬性が改善されてきたため、アルファルファの利用が難しかった道東地域でも栽培が可能です。

(3)アルファルファの病害
 乾燥地が原産のアルファルファを日本のような湿潤な気候で栽培すると様々な病害が発生しやすくなります。
 北海道での重要な葉枯性病害として、アルファルファそばかす病があげられます。アルファルファそばかす病は小葉と托葉に淡褐色斑点が発生し、次第に広がって3mm程の病斑になります。これが1枚の葉に数十個現れ、そばかす状に散在します。病斑が融合して葉縁に達すると、病斑内部は灰色に枯れ、その表面に黒粒点が現れます(写真 7-3)。
 冬季に発生する病害として、イネ科牧草と同様に雪腐病が重要な病害です。アルファルファ菌核病は株全体を枯死させ、雪解け後に葉や茎が枯れた部分や地中浅いところに直径5mm程度の黒い粒が多数見つかります。アルファルファ黒色小粒菌核病は地際~地表部が腐敗し、直径1mm程度の小さな黒褐色の粒が付着します。株の枯死は少ないですが、春の萌芽の遅れや茎数の減少により減収します。
 品種改良によってこれら病害に対する抵抗性が改善されています。そのため、抵抗性に優れる品種を栽培し、アルファルファを健全に育てて病害に対する抵抗力を高めることが大切です(写真 7-4)。過去に大きな問題となったアルファルファバーティシリウム萎凋病については、最近の北海道優良品種は全て抵抗性が強いため、深刻な被害は少なくなってきています。