1.牧草の刈取り危険帯

(1)刈取り危険帯とは
  秋は牧草にとって貯蔵器官に養分を蓄積し、越冬態勢に入る大切な時期です。この大切な時期に牧草を刈取ると、貯蔵養分が十分蓄えられないまま越冬態勢に入るため、凍害や雪腐病による被害を受けやすく、翌春の牧草株数や1番草収量の低下につながります。この貯蔵養分を蓄える時期(牧草を刈ってはいけない時期)を「刈取り危険帯」と呼んでいます。刈取り危険帯は草種によって若干異なり、草種ごとの危険帯がそれぞれ設定されています。
(2)危険帯前後における牧草の刈取り
 オーチャードグラスの場合、危険帯の前(例えば9月中旬)に刈取りを行うと、それまで貯蔵された養分は再生によって一度消費されますが、気温が低下し、生育が停止するまでに十分な期間があるため、越冬するための養分を再び蓄えることができます。また、危険帯以後(例えば10月下旬)の利用では、気温が低下しているためにオーチャードグラスの生育はほとんど停止しており、再生しないか、再生してもごくわずかであるため、養分の消費が少なく、十分な貯蔵養分のまま越冬することができます。
 一方、危険帯の期間中に刈取ると、刈取り後はまだ気温が高いために牧草が再生し、それによって貯蔵養分が消費されます。その後は気温が低下して生育が止まってしまうため、貯蔵養分の蓄えが不十分なままで越冬態勢に入ります。貯蔵養分が十分蓄えられないまま越冬態勢に入るため、凍害や雪腐病による被害を受けやすくなります。
 3草種の刈取り危険帯の目安を図 1-1に示しました(地域や年次により時期が多少前後します)。チモシーについては10月上旬が刈取り危険帯といわれていますが、その影響は図に示した3草種ほど大きくはありません。