乾草の調製について

1.調製の前に
 乾草調製はサイレージ調製と同等以上に気を使います。特に、気象条件に気を使いますので、天気予報を確認しましょう。2008年はゲリラ雷雨が流行しました。降雨には充分気をつけましょう。

2.刈取り
 刈取りは、モアーコンディショナー(以下モアコン)あるいは、刈取り後にヘイコンディショナーを使用します。牧草を圧砕・折曲・打撃することで、乾燥効率を促進します。コンディショナーはロール式(図1)、ロータ式(図2)に分けられます。作業幅の広いロール式が主流でしたが、近年ロータ式も作業幅がロール式に追いついたため、ロータ式にも注目が集まっています。使用用途としては、ロール式がマメ科を含む草地に対して、葉を傷つけにくいとされており、打撃によるロータ式はマメ科に対して、葉を落としやすいという点があります。

コンディショナー

 現在ではモアコンが主流で、その大きな特徴は水分のコンディショニングにあります。図3は、ディスクモアとモアコンを比較した試験です(COMPARING FORAGE DRYDOWN RATES USING A SUPERCONDITIONER IN WISCONSIN : Matt Hanson)。処理1はディスクモア、処理2はモアコン、処理3はディスクモア+ヘイコンディショナー、処理4はモアコン+ヘイコンディショナーです。刈取り後の水分含量の推移を見ると、ディスクモアよりも、その他の3処理の方が、水分含量が低下し易いことが顕著に現れています。また、降雨に曝された後の水分変化において、水分のコンディショニング効果は明らかとなっています。
 刈取り後の牧草は、水分が40%以下になるまで呼吸を続けています。この損失は主として消化の良い炭水化物です。このロスは、牧草の繊維含有率を増加させて、飼料のエネルギー価値を低下させます。呼吸のロスは通常5~10%ですが、効率よく乾燥させることで、5%未満となると言われています(Rotz 1994年)。つまり、刈取りと同時にコンディショニングを行うことは、乾草調製において重要なポイントとなるでしょう。

アルファルファ刈取り後の水分変化

3.反転
 調製中にも、牧草養分の損失が見受けられます。図4、5は、新得畜試(昭和52~56)イネ科牧草の乾草調製、貯蔵過程における養分損失に関する試験です。図4から、テッダによる反転回数の増加はOCCの損失が顕著であることが言えます。OCCは細胞内容物の略で、主に糖、デンプン、有機酸、蛋白質、脂肪などを含んでいます。反転回数の増加は落葉しやすくなるため、行き過ぎた反転は栄養価の低下につながります。また、調製中の降雨は蛋白質、炭水化物、りん酸、カリが溶脱しやすくなります。図5は人工降雨後の変化を調査した結果です。どの処理でも、粗蛋白質は低下しました。加えて反転回数が増えると、その損失も大きくなる結果となっています。

OCCの変化

CPの変化

4.集草
 専用レーキで行うと、集草にムラが無く、作業幅も6mを超える機械が多いため、効率的かつ迅速な作業が行えます。オペレーターは、収穫を行う機械のピックアップ幅や道筋など、次の作業を考えた集草作業が必要となります。

5.梱包
 ロールベーラは可変式(芯巻き)と定径式(側巻き)に分けられます。可変式は芯の圧力とベールの外側の圧力がほぼ等しく、径の幅を変更することができます。定径式は牧草のピックアップ始めは緩やかに巻きつけられますので、ベールの中心部の密度は外周部より低くなります。つまり、放熱しやすいため乾草調製に適していると言われています(『粗飼料生産のシステム化と機械』より)。また、梱包仕上げの結束に使用されるトワインとネットでは、ネット梱包の方が効率的であるとされています。

6.くん炭化(ヒートダメージ)
 図6は同一のロールから採取したものです。乾草ロールの中心部がくん炭化したもので、成分は表1に示しました。くん炭化は蛋白質の変質が特徴的です。ルーメン内で利用されにくい結合蛋白質が高くなり、TDNが低下します。くん炭化を避けるためには、水分調整、ロール形成圧力、作業時間帯に注意しましょう。

ロールのくん炭化

ヒートダメージ栄養変化(改)

7.乾草の分析評価
 表2.は、乾草の分析評価の例です。生育ステージが進むと、ADFとNDF含量が増加します。生育ステージを進めると牧草の乾燥が速くなりますが、成分は大きく後退しますので、育成牛、乾乳牛への給与前には飼料分析を行い、適切な給与を心掛けましょう。また、購入乾草についても品質に気を配りましょう。

等級評価