1.飼料用ムギ類の種類と栽培方法

 都府県の秋・冬作用の牧草飼料作物で、イタリアンライグラスに次いで利用が多いのが飼料用ムギ類です。一口にムギ類といっても特性は様々ですので、利用目的に合った種類と品種を選ぶ必要があります。
 表 1-1に飼料用ムギ類の種類と秋冬作の代表草種であるイタリアンライグラスの特性の比較を示しました。概して、耐湿性や嗜好性、乾きの早さではイタリアンライグラスが優れ、耐寒性や収量性ではムギ類が勝るといえます。
 ムギ類の再生力は弱いのでイタリアンライグラス等の牧草と違い再生利用は期待できませんが、その代わりに刈取り後の残株、残根が少ないので、後作の耕起・播種作業が比較的容易です。

 ムギ類は種類によって異なりますが、イタリアンライグラスよりも播種期の幅が広いことが特長です。通常ムギ作といえば秋播き春収穫を思い浮かべますが、飼料作では、早播きトウモロコシの後作として、晩夏~初秋に播種し年内に刈り取り利用する体系で、極早生のエンバクやオオムギがよく使われています。また、ライムギやオオムギ、ライコムギは、低温でも良く発芽し、耐寒性も強いので、イタリアンライグラスの播種適期から外れる11月以降でも播種することができます。なお、ライムギは耐雪性も強い品種が多いですが、オオムギやライコムギは雪には弱いので、東北などの多雪地帯での栽培は避けたほうが無難です。

(1)ムギ類の播種作業の工程

①堆肥・土改材:堆肥は3t/10a程度を目安とし、土壌の酸性が強い場合は石灰を散布する。
②耕起・砕土・整地:播種床を作るためなるべく丁寧に作業する。
③基肥散布:化学肥料を散布するが、地力が高い場合は無施肥とする場合もある。
④播種:飼料作は通常ばら播きとなるが、ムラなく丁寧に播種する。
 小面積の場合は散粒機の利用も可能。
⑤覆土:表層から5㎝程度を軽く攪拌して覆土する。
⑥鎮圧:発芽の促進に大事な作業なので、しっかりローラーをかける。
(2)ムギ類の利用とサイレージ調製上の注意点
 ムギ類は青刈り利用からロールベール・ラップサイレージを含むサイレージ利用のいずれにも適し、更に条件が良ければ乾草収穫も可能であり幅広く使うことができます。
 また、栄養価の高い子実を飼料として利用できることもムギの魅力のひとつです。しかし、完熟期になると栄養価の高い子実の収量や乾物収量は高まりますが、茎葉部の消化性や栄養価は稲ワラ並に低下し、ライムギなど種類によっては嗜好性も低下することもあります。ライムギの収穫時期は穂孕みから出穂始、ライコムギは出穂期前後、エンバク、オオムギの収穫時期は出穂期から糊熟期までとするのが適切です。
 細切サイレージ利用の場合、水分は60~70%程度に、ロールベール・ラップサイレージの場合は50~60%になるように予乾します。これよりも高水分でサイレージ調製する場合は、速やかに乳酸発酵が進むようサイレージ用乳酸菌資材の添加を検討します。オオムギやライコムギは水分が低下する糊熟期であれば、飼料用稲収穫機等によるダイレクト収穫調製も可能です。
 ムギ類に共通する注意点として、一般に稈が太く中空なため、サイレージ調製する際に密度を高めにくいことがあります。しっかりと密度を高めて空気を抜くようにしないと、カビの発生や開封後の二次発酵を招きやすいので注意します。刈り取り時に茎を圧砕するモアコンディショナーを使用することで予乾の時間を短縮でき、サイレージの密度も高めやすくなります。