3.ペレニアルライグラスの特性と品種

 ペレニアルライグラスは放牧適性が最も優れる牧草であり、北海道や東北地方、本州の高標高地が栽培適地です。特に、北海道(道東を除く)では集約放牧の主体草種としても利用されています。また、近年の北海道では、チモシーやオーチャードグラスを主体とした採草用草地へのペレニアルライグラスの少量混播や経年草地への追播が広まっており、雑草抑制やサイレージの品質向上の効果が期待できます。

(1)栽培特性
 ペレニアルライグラスの出穂始は中生品種で6月上~中旬、晩生品種で6月中~下旬です。早晩性が早い品種は兼用利用も可能であり、遅い品種は放牧利用に適します。
 ペレニアルライグラスは再生力と分げつ力が優れており、嗜好性が高く、季節生産の均一性が優れており(春から秋までの生育量の変化がチモシーやオーチャードグラスに比べて小さい)、耐蹄傷性も高いため、放牧利用に適しています。そのほか、初期生育が優れているため、草地更新時の雑草競合に強く、追播用としても利用価値が高い草種です。
 飼料成分はチモシーやオーチャードグラスより糖含量が高く、繊維含量が低い傾向にあります。道東ではペレニアルライグラスの冬枯れリスクが高いため利用を推奨されていませんが、飼料成分の向上を目的にペレニアルライグラスを利用する酪農家も増えています(写真 3-2)。
 ペレニアルライグラスはチモシーと比べると温暖な気候を好み、極端な低温や高温を嫌う特性があります。そのため、北海道では多雪地域の道北、道央、道南での利用が主であり、土壌凍結地帯である道東地域での利用は推奨されていません(道東ではペレニアルライグラスの代わりに、メドウフェスクの利用が推奨されています)。また、採草利用にあたっては、出穂期以降では嗜好性や飼料価値が低下しやすく、倒伏しやすいことから、出穂始前後に収穫を行う必要があります。

(2)越冬性
 ペレニアルライグラスはチモシーやオーチャードグラスと比較して越冬性が劣る草種であり、越冬条件が厳しい地域では冬枯れするリスクが高くなります。ペレニアルライグラスの品種開発においては、越冬性が強くなるように改良されています。写真 3-3は、品種によって越冬性に差が出た時の様子です(雪腐大粒菌核病に罹病)。品種改良が進んでいる当社育成品種の方が、越冬後の萌芽が良好であり、収量が期待できます。冬枯れのリスクを避けるためにも、越冬性が優れる品種の利用を推奨します(道東地域を除く)。

(3)病害
 ペレニアルライグラスの病害では、雪腐病、網斑病、冠サビ病、葉腐病などがあります。特に、雪腐大粒菌核病は重要病害であり、根雪始が遅く、土壌凍結が厳しい年に多発します。加えて、融雪が遅くなると被害はさらに助長されます。雪腐病に罹病すると、枯死による裸地化や萌芽の遅れが発生し、被害が甚大な際には全面枯死に至ります。雪腐病に対しては、抵抗性が高い品種を利用することが推奨されます。また、殺菌剤の散布による対策も可能です。