フットバスの有効利用方法

1.目的
 蹄病の発生をコントロールするためには、適切な栄養管理と、清潔な環境の整備を行うことが肝要です。フットバスは、環境整備に代わるものではありません。しかし環境中の細菌コントロールを補助することで、湿潤環境に起因する蹄病(趾間皮膚炎・趾間フレグモーネ・趾皮膚炎・蹄球びらん)を抑える効果があります。
 特に最近は、趾皮膚炎(PDD・いちご病・ひげイボ等とも呼ばれる)が多くの牧場で大流行しています。加速度的な趾皮膚炎の感染によって、短期間で牛群の5割以上の牛が跛行を示した例も目にしております。こういったケースに対処するために、削蹄時の治療や、抗生物質の局所噴霧による治療を行いつつ、その後の発症を抑えるために蹄浴を行う事が重要なってきています。

2.方法
1)設置位置
 通常、蹄浴槽はミルキングパーラーのリターン通路に設置します(写真1)。
 繫ぎ飼い牛舎では、牛舎の出入り口に設置している例も見られます(写真2)。

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2)設置方法
 推奨されている蹄浴槽の大きさは、長さ275cm以上×幅90cm×深さ15cmです。蹄浴槽が大きすぎることで問題となることはありませんが、薬液の使用量が増えるために、より多くのコストがかかってしまいます。
 リターン通路が90cmよりも幅広い場合は、牛が蹄浴槽を避けて通らないように、2つの蹄浴槽を並べて設置した方が良さそうです(写真3)。

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 蹄浴槽は縦に2槽を並べて設置するのが理想です。パーラーに近い位置に設置した蹄浴槽には水を溜めておき、ここで蹄に付着した有機物を落とします。食器用洗剤を混ぜるとさらに効果的であると言われています。パーラーから遠い位置に設置した蹄浴槽には、各種薬液を入れておきます(写真4)。

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 最近は、薬剤と発泡剤を混合して泡立て、この泡の上を歩かせる蹄浴も見かけます。専用のコンプレッサー、もしくはミルキングパーラーのコンプレッサーを流用して、発泡させる機械を設置して使用します。泡の排出口は、リターン通路の真上、高さ1.5mくらいの位置に設置します。泡の蹄浴の利点は、薬液を交換する手間が省けることと、凍結の恐れがある厳寒期も実施できる点です(写真5)。

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3)薬液
 実際に使用されている薬剤には、いくつかの種類があります。現地で見かける主な薬剤の種類と利点・欠点については表1を参照してください。実際の利用に際しては、販売会社や獣医師に相談されることをお奨めします。

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4)実施方法
(1)蹄浴の実施頻度
 推奨される実施頻度はありません。重大な感染症の治療や制御を行う場合には、毎日行うべきです。予防が目的であれば、週に2~3日で十分といわれています。ただし、必ずしも年中行う必要はありません。春~夏にかけて、高温多湿条件となり蹄病が増える時期を見定めて実施します。
(2)薬液の交換頻度
 薬剤の種類、蹄浴槽の大きさ、牛群の大きさ、前浴槽の有無(蹄浴槽の汚れ具合)、リターン通路の数によって異なります。 

オキシテトラサイクリン蹄浴液の汚染効果に関するフロリダの研究では、50頭の牛が通過するとpHが変化する事が明らかになっています。また、50頭の牛が通過すると薬剤の活性が50%減少する事が明らかになっています。
 硫酸銅も、蹄浴槽内で有機物によって急速に中和されてしまいます。
 石灰乳の蹄浴については、経産牛78頭の牛群で、約200ℓの蹄浴槽を用いて、3日間薬液を変えずに蹄浴を行っても、菌の増殖やpHの低下が認められなかったと報告されています。ただし、3日間使用した薬液は糞尿と混合されてペースト状になってしまいます。これが蹄間に詰まって炎症を起こす恐れがあるため、3日に1度よりも高い頻度での交換が奨められています。
以上の点から、最低1日に1回以上交換するのが望ましいのではないでしょうか。
 大規模な牛群では、全ての牛に対して、十分な薬剤の効果を発揮させるために、搾乳作業の合間に薬液を添加する必要があります。
(3)蹄の前洗い
 前浴槽を設置する事ができない場合は、ミルキングパーラー内で蹄に付着した糞尿を洗い流すと効果的です。蹄の前洗いを実施している牧場では、高い蹄浴の効果が得られています。