食品工場から排出される食品製造副産物を飼料として利用することは国内飼料利用促進による飼料自給率向上の観点から注目されています。しかし、実際の現場では、 ①飼料特性や給与量・給与基準がわからない などの理由から積極的な利用が進んでいないと思われます。また多くが高水分で変敗しやすくそのままでは保存や輸送が難しいのも一因です。食品製造副産物は栄養成分の偏りがみられ、例えば大豆を原料とする醤油粕は高蛋白質原料、豆腐粕は高蛋白質・高エネルギー原料、大豆皮は高繊維原料です。また同じ食品製造副産物であっても製造される工場が違えばその栄養成分は異なることがあるため新しい食品製造副産物を使用する際は必ず成分分析結果を基に飼料設計する必要があります。 <主な食品製造副産物の飼料特性> |
<消化性と物理性> <蛋白分画の変化> <炭水化物の特性> |
図1は関東東海8都県協定試験の結果です。対照区は輸入乾草、穀類などで構成された一般的な給与メニューですが、副産物区にはビール粕、豆腐粕など食品製造副産物を多く組み入れた構成でNDF含量が45%と高く、反対にNFCは26.6%と低い値になっています。 |
図2および3に乳生産性および乳成分の結果を示しました。副産物区の乳生産性が対照区と同程度であったことから高消化性のNDFをルーメン微生物がエネルギー源として有効に利用したと考えられます。また、食品製造副産物を使用する際に懸念される乳成分についても極端な低下はみられておりませんでした。 <食品製造副産物中の脂肪> ①原料や季節により粗脂肪含量の変動があるため定期的に分析値を把握することが重要です。 通常、不飽和脂肪酸を摂取してもルーメン内で水素添加されるため悪影響を及ぼしません。しかし、暑熱時は乾草やサイレージなど繊維の食いが落ちることで、ルーメン内pHが低下しやすくなります。ルーメン内が低pHの場合に不飽和脂肪酸を多く摂取するとトランス脂肪酸の生成量が多くなり乳脂肪合成阻害が起こり、乳脂肪率低下につながることが知られています。 |