サイレージのカビ毒について

  近年、カビ毒は分析手法が向上し、微量でも検出できるようになりました。そのため、カビ毒が原因と思われる疾病などの症状についても明らかになりつつあります。ここでは、飼料で注意が必要なカビ毒について紹介し、サイレージでの汚染状況などを説明します。
カビ毒の種類
 カビ毒とは、カビが産生する毒素の総称で、カビ毒として今までに知られているものは約400種類にもなります。その中で飼料安全法において規制があるカビ毒は主に3種類になります。
 アフラトキシンB1はアスペルギルスという種類のカビが産生する毒素で、カビ毒の中でも非常に微量で毒性がある物質です。国でも基準値が定められていて、配合飼料(幼畜用及び乳牛用)は0.02ppm以下(0.1%=1000ppm)とされています。アフラトキシンB1を摂取した時の症状としては、飼料摂取量の低下、乳量の減少、免疫力の低下などが言われています。
サイレージのカビ毒について
  デオキシニバレノール(通称DON)はフザリウム(赤カビ病という作物の病気もフザリウムが原因菌です)という種類のカビが産生する毒素で、アフラトキシンより毒性は低いものの、サイレージからの検出頻度が高いカビ毒です。この基準値は生後3ヶ月以上の牛の飼料では4.0ppm以下とされています。デオキシニバレノールを摂取した時の症状としては、飼料摂取量の低下、胃腸炎、嘔吐などが言われています。
サイレージのカビ毒について2
  ゼアラレノンはやはりフザリウムが産生するカビ毒で、エストロゲン類似反応を起こして、繁殖障害などの原因になります。このカビ毒の基準値は、家畜に給与される飼料の最大値が1.0ppmとされています。
サイレージのカビ毒について3
サイレージにおけるカビ毒汚染
 農林水産消費安全技術センターで日本のサイレージでの汚染状況を調査したところ、調査点数は少ないものの牧草サイレージからはカビ毒は検出されませんでした。一方、トウモロコシサイレージからはデオキシニバレノールやゼアラレノンが高い確率で検出されていました。
  また、北海道立畜産試験場において、道内のトウモロコシサイレージ245点についてデオキシニバレノール濃度を調査したところ、基準値である4ppmを超えるものは全体の4%であったと報告されています。
サイレージのカビ毒について4
カビ毒にはいつ汚染されるのか
  
同じく北海道立畜産試験場の調査では、サイレージの発酵品質に関わる項目とデオキシニバレノール濃度には相関がなく、発酵前の原料に付着しているフザリウム菌数とデオキシニバレノール濃度に相関が認められることから、デオキシニバレノールの汚染は、サイレージの発酵過程ではなく圃場から始まっていると考えられます。
サイレージのカビ毒について5
サイレージのカビ毒について6
  また、北海道十勝地域におけるトウモロコシの生育時期別のデオキシニバレノール濃度を見たところ、フザリウムは8月中旬~9月上旬に分離されるようになり、デオキシニバレノール濃度は9月中旬から増加すると報告されています。
サイレージのカビ毒について7
  さらにトウモロコシの倒伏によりデオキシニバレノールがどうなるかを検討した結果によると、倒伏によりデオキシニバレノール汚染が助長される傾向にあることが報告されています(平成18年度 北海道農業研究成果情報)。

デオキシニバレノールの乳牛への影響

 前述のように、大量のデオキシニバレノールを摂取した場合には、飼料摂取量の低下、胃腸炎、嘔吐などの影響が出ると言われていますが、北海道立畜産試験場ではデオキシニバレノール含有トウモロコシサイレージの給与が乳牛の生産性に与える影響を調査しています。
  デオキシニバレノール含有トウモロコシサイレージ(0.4~4.6ppm)を給与している経産牛26頭のデータ(n=242)を解析したところ、飼料中のデオキシニバレノール濃度と乾物摂取量の間だけでなく、デオキシニバレノール摂取量と乳量との間にも関係が見られず、許容値内(4.0ppm以下)であればデオキシニバレノール含有飼料の摂取が乳量へ及ぼす影響は認められないとしています(平成18年度 北海道農業研究成果情報)。

カビ毒吸着資材

  これらのカビ毒対策として、カビ毒吸着資材が市販されています。市販されているカビ毒吸着資材は大きく分けて鉱物を主成分とするタイプと酵母細胞壁を主成分とするタイプがあります。当社では独自に市販されているカビ毒吸着資材の吸着能を調査しました。
  各種カビ毒吸着資材のアフラトキシンに対する吸着能を比較したところ、ノバシルプラスを含む鉱物系の吸着資材は吸着能が高い傾向にありました(当社ではノバシルプラスを取り扱いしています)。一方、トウモロコシサイレージで検出されるデオキシニバレノールに対しては、鉱物系を含む全ての吸着資材で吸着能が高いものはありませんでした。サイレージで問題となるカビ毒に効果のある製品が望まれるところですが、牛の症状などからカビ毒の影響が疑われるときには、ノバシルプラスなどのカビ毒吸着資材の給与により改善される事例もありますので、お試し下さい。
サイレージのカビ毒について8