5.アカクローバの特性と品種

 アカクローバは越冬性に優れ、アルファルファよりも土壌環境を選ばずに栽培できるため、北海道において広く利用されているマメ科牧草の一つです。利用用途としては、採草目的でチモシーやオーチャードグラスと混播して利用されています。
(1)アカクローバの栽培特性
 アカクローバなどのマメ科牧草はたん白質やカルシウムなどのミネラル含量が高く、嗜好性に優れるため、牧草の栄養価や嗜好性を高めるうえで重要な役割を果たしています。またマメ科牧草は、共生する根粒菌の窒素固定により土壌中の窒素分を増やす働きもあります。これらの窒素はイネ科牧草にも利用されるため、マメ科牧草が適度に混播された草地ではイネ科牧草の生育も良好であり、少ない窒素肥料で多くの収量を得ることができます。また、アカクローバの深根性により透水性の改善も期待できます。

(2)アカクローバとイネ科牧草の混播組合せ
 アカクローバには早生品種と晩生品種があります(写真 5-2)。ともに越冬性が優れており、4年程度の永続性が期待できます。競合力は早生品種が晩生品種よりも強いことから、混播するイネ科牧草や草種によって使い分ける必要があります(表 5-1)。

 早生品種は6月中旬~下旬頃に開花始を迎えます。1番草収穫後の再生力が良好で競合力が強いため、刈取り後の再生が比較的旺盛なチモシーの極早生・早生品種やオーチャードグラスとの混播に適しています。
 晩生品種は6月下旬~7月上旬頃が開花始にあたります。1番草収穫後の再生力が穏やかで競合力が弱いため、刈取り後の再生が緩慢なチモシーの中生・晩生品種との混播に適しています。
 アカクローバとチモシーの混播組合せを誤ってしまうと、アカクローバがチモシーを抑圧し、優占してしまう場合があります。アカクローバが優占した圃場は、その後のアカクローバの消失により裸地が多い草地となってしまいます。アカクローバを混播する際は播種量だけでなく、チモシー品種の早晩性により、アカクローバ品種を使い分けることが重要です。
(3)アカクローバの短所・病害
 アカクローバは多回刈りすると衰退することから放牧利用には適さず、採草利用しかできません。また、アカクローバは短年草であるため、草地での永続性は4年程度と利用年限が長くありません。しかし、アカクローバは簡易的な追播技術が確立されています。アカクローバの初期生育は比較的良好であり、イネ科牧草との混播草地でアカクローバが衰退した際に、追播することによって、低コストで草地をよみがえらせることが可能です。追播技術に関する説明は北海道農政部(2002)「マメ科牧草追播マニュアル」をご参照ください。
 重要病害にはうどんこ病をはじめとして、茎割病やサビ病、菌核病があります。うどんこ病に罹病すると、小葉上に白色粉状の菌叢が発生します(写真 5-3)。また、クローバ菌核病は永続性に影響する重要病害であり、罹病すると茎葉や根は腐敗し、融雪後に海苔状になり枯死します(写真 5-4)。対策として抵抗性品種を利用します。

引用文献
北海道農政部(2002)「マメ科牧草追播マニュアル」