2.フロストシーディングの試験事例

(1)完全更新
 2020年に実施した当社北海道研究農場での完全更新事例をご紹介します。この圃場はこれまでトウモロコシを栽培していましたが、排水性が不良の上、石も多かったため、トウモロコシの収穫後にフロストシーディングにより草地への転換を図りました。排水性の不良な圃場は、融雪後になかなか機械が圃場に入ることができず、春の作業開始時期が遅れてしまうケースもあります。フロストシーディングであれば土壌が凍結している時期にも施工が可能であり有効と考えられます。

 ほぼ平坦な圃場であったため、融雪水による土壌の流亡もなく、チモシーの定着が非常に良好となりました(写真 2-1)。春は圃場がぬかるむことが予測できたため、施肥は播種の翌日に行い、春の施肥作業を前倒ししました。
 2021年6月14日の時点では一年生のキク科の雑草等が散見されましたが(写真 2-3)、掃除刈りにより対処することができました。

(2)作溝法と表層攪拌法による簡易更新
 2020年に実施した株式会社TACSしべちゃ(川上郡標茶町)での事例をご紹介します。この圃場では、ブレドオーバーシーダーを利用した作溝法と表層攪拌法による簡易更新をフロストシーディングで実施し、施工方法による定着状況の違いなどを比較しました。

 発芽は両区とも良好で、その後の生育も順調に経過しました(写真 2-6~ 2-9)。雑草の発生は少なく、きれいなチモシー草地となり、施工方法の違いによる牧草の生育に大きな違いは認められませんでした (写真 2-10)。
 留意点としてフロストシーディングでの施工の場合、傾斜地での表層攪拌法による更新は、融雪水と共に表土と種子が流亡してしまうリスクが挙げられます。作溝型播種機を用いた簡易更新の場合は、表土流亡のリスクが抑えられ、有効と考えられます。
 これまでTACSしべちゃでは、傾斜地の植生改善方法について検討を重ねてきました。より傾斜の急な草地においては、表層をマット状に切ることなく播種が可能な、穿孔型播種機(グレイトプレインズ・ノーティルシーダー)による施工が有効と考えられます。

(3)追播
 フロストシーディングは更新時だけでなく、追播も可能です。ギシギシ等の雑草に対して除草剤を用いて防除した後、裸地をそのまま放置すると、再び雑草が繁茂してしまいます。草地に裸地が生じた場合、速やかに追播を行うことで植生の悪化を抑制することができます。この事例では、圃場の一部に一年生雑草が繁茂したため生じた裸地へ、作溝型播種機(ブレドオーバーシーダー)を用いて、晩生のオーチャードグラスを2.0kg/10aの播種量で、2020年11月28日に追播しました。翌春の発芽は良好で、しっかりと条状にオーチャードグラスが定着しました(写真 2-11)。
 また、地下茎型イネ科雑草が優占してしまった草地に対して、収量や栄養価向上を目的として、競合力の優れるライグラス類やオーチャードグラスをフロストシーディングにより追播する事例も各地で取り組まれており、効果が確認されています1)

参考資料
 1)フロストシーディングを活用した草地の植生改善 雪たねニュースNo.382・北海道版2018. 11