移動のストレスなどが少ない 分娩前後でほとんど環境が変わらないことが、ストレスを少なくしていると思います。また、分娩ペンは当初予定していたより少なくなったのですが、それにより本当に分娩直前しか利用しなくなっています。ウイスコンシン州立大学のギャレット・オッツエル博士は、分娩ペンにいる日数が分娩後の乳牛の成績に与える影響について調査しています。要約しますと、分娩ペンにいた日数が3日未満と3日以上の牛を比べたら、分娩後60日以内の死亡・淘汰は、長いほうが約3倍も多かったということです。そこで分娩ペンには牛を4時間未満しか入れないことを推奨しており、分娩兆候を発見してから移動させることとしています。筆者が巡回している牧場でも、分娩ペンが多い牧場では、分娩のかなり前から分娩ペンに入れている牧場を見かけます。そのような牧場では分娩前に、ストレスで食い込みが悪くなるという話を聞きます。 分娩前後で飼料の急変がないことも良いと思われます。潜在性ルーメンアシドーシス発生は、急激に給与飼料プログラムを変更した場合に起きます。特に乾乳期から泌乳期にかけては、それが大きく変化しやすくなります。(有)ノースワンでは、乾乳牛に対しても搾乳牛と同じグラスサイレージを給与しています。それに若干のとうもろこしと乾草を混ぜ、フィードステーションにて乾乳用配合飼料を給与しています。
産褥牛群の新設 以前は分娩するといきなり頭数の多い搾乳牛群に入れていました。牛舎を増築してからは、分娩すると産褥牛群に入れ、そこは牛床数より少ない頭数にしています。また、クロースアップ牛群もそうですが、前述したストールのデザインなど、カウコンフォートに優れた施設で飼養されています。
これからの課題 現在の課題はサイレージの品質が安定しないということです。ここは牛舎近隣の草地とやや離れた場所の草地があります。スラリーはどうしても近くの草地に多く入るようになります。ここ数年の頭数増頭にともない、これらの草地は過剰施肥の傾向が見られます。粗飼料分析をかけても、カリウムの含量は乾物で3%を超え、酪酸含量も高くなっています。そこで、今年からコーンサイレージを20ha栽培し、そこにスラリーを多めにいれることにしています。もちろん、最近のとうもろこしの高騰に対し、飼料コストを下げたいという目的もあります。 また、コーンサイレージがあると、搾乳牛にも良いと思いますが、クロースアップ牛に対し、NFC源の供給、ミネラルバランスの改善という点から、飼料給与メニューがより改善されることが期待されます。 今回、筆者も改めて分娩前後の飼養管理が、生産性の改善に及ぼす影響について実感しました。今後の(有)ノースワンの更なる飛躍に期待したいと思います。
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