2.チモシーの特性と栽培(都府県版)

 チモシーは東北や標高の高い冷涼な地域で利用され、オーチャードグラスと比較して牛の嗜好性が高い草種です。チモシーは、収穫が遅れ出穂期以降の刈取りになった場合でも、他のイネ科牧草より嗜好性の低下が少ないことが評価されています。
 品種数が多く極早生~極晩生まで、その出穂期の幅は約1ヵ月に及びます。ただし、チモシーはオーチャードグラスより暑さに弱く、越夏性が劣ることから都府県で栽培できる地域は東北や高標高地などの冷涼な場所に限定されます。

(1)チモシーの利用方法 =混播設計=
 チモシーは北海道や北東北のように夏が冷涼な地域での栽培に適した草種です。したがって、都府県でチモシーが栽培される地域は限定されます。北東北では北海道と同様に単播での利用が多いですが、その他の地域でチモシーを利用する場合には越夏性の高いオーチャードグラスやメドウフェスク等との混播で利用します。
 チモシーはオーチャードグラスより刈取り後の再生が緩慢なため、状況によってはチモシーの生育が抑圧されることもあるので、混播草種の選定と混播する播種量には十分注意します。チモシーに他のイネ科草種を混播する場合には、チモシー 2.0㎏/10aに対して0.5㎏/10aとします。また、チモシーにシロクローバを混播する際には、チモシーとの混播適性が高い小葉型シロクローバを使用し、かつ、0.1㎏/10aと播種量を抑えます。

(2)チモシーの栽培上の留意点
①夏枯れ対策
 一般的に夏枯れは、日平均気温で約22℃以上の期間が2ヵ月以上続くと生育が衰え、真夏日(最高気温が30℃)が多くなるほど夏枯れが増大する傾向があります。特にチモシーは暑さに最も弱い草種ですので、栽培に当たっては地域の気象条件を十分に考慮します。
 主な栽培地域である東北地方で越夏性を高めるには、1番草の収穫を梅雨前(6月上旬)に行い、夏季の高温下での刈取りのストレスを回避します。雑草の進入を抑制するために、2番草の収穫は気温が低下し始める8月下旬~9月上旬に行います。
 また刈高は5㎝程度とし、枯葉や残葉を残さないようにします。予乾目的でテッダーを掛けるよりモアコンを利用すれば、トラクター作業が省け、チモシーの株を痛めることが少なくなります。
②雑草対策
 播種当年の雑草対策は、除草剤の利用が難しいことから、雑草の密度が高く、かつ、チモシーの草丈より雑草の草丈が高くなった場合には、雑草を主体に刈る‘掃除刈り’で対応します。雑草の草丈が高くなり、長期間に渡ってチモシーを被圧すると光合成が十分できず、チモシーの株が枯死する場合があり、密度の低下につながります。
③播種時期
 播種は春播きと秋播きが可能ですが、雑草競合が少ない秋播きを主体にします。

④2年目以降の管理
ア.刈取り管理
 2年目以降の刈取り管理は以下のように作業を進めます。
 ・1番草:出穂始~出穂期に刈取り (品種によって異なるが5月下旬~6月中旬頃)
 ・2番草:1番草後約50日頃に刈取り(再生状況と天候により調整)
 ・3番草:2番草後約60日頃に刈取り
イ.施肥管理
 草地を永続的に利用するには刈取り後を主体にした施肥管理が重要です。年間の施肥量は、生草収量で5トン/10aの収穫を目標とした場合、窒素-リン酸-加里を成分量で15-10-10kg/10aを基準に、下記のように刈取り回数によって分肥します
 ・2回/年の場合(比);越冬後の早春:1番草刈取り後=2:1が目安
 ・3回/年の場合(比);越冬後の早春:1番草刈取り後:1番草刈取り後=3:2:1が目安
ウ.施肥の時期
 越冬後の早春施肥は、チモシーの萌芽期(新しい葉が展開し始める頃)を目安に施用します。その後の施用は、刈取り後5~10日を目安に行うと効果的です。