アルファルファの原産地は中央アジアであり、ヨーロッパ、ロシアへ広がった集団とシルクロードから中国へ伝播した集団があります。その過程で淘汰され、その地域に適した在来種が確立しました。中国までは地続きであるために早くから伝えられ栽培されましたが、海に囲まれた島国である日本への導入は遅く、また伝播経路は降水量が少なく夏は乾燥、冬は少雪・土壌凍結地帯が多い、日本の気候風土とは異なる条件でした。そのため、北海道での栽培はアカクローバのように容易な草種ではありません。
(1)圃場の設定と土壌改良
北海道においても品種改良が継続されて新しい品種が販売されていますが、アルファルファは土壌条件を選ぶ草種であるためアカクローバのように定着は容易ではありません。栽培する時の圃場の条件は、水はけが良好なのが第一で、次いで保肥力のある土壌です。表 1-1にアルファルファの生育が良好な草地(1~5)と栽培が難しい草地(6~10、11~15)の分析値を示しました。1~5は保肥力(CEC)に優れ、ミネラル分、特にカルシウムが十分に含まれた土壌ですが、6~10では保肥力は優れますがミネラル分が少なくpHが低い土壌です。11~15は排水が良好な土壌ですが保肥力が小さく、ミネラル分も少ない草地です。保肥力の優れる圃場は一度に多量なミネラル分の施肥が可能であり、長期間の改良効果が期待されます。しかし、保肥力の劣る草地ではpHを改良するには少ないカルシウム資材で可能ですが、改良効果に持続性がなく、毎年秋に炭カル等の施用が必要になります。
また、1~5のような土壌に改良するには、堆厩肥の施用が欠かせません。堆厩肥は分解されると保肥力を高め、含まれる肥料分はカリが多く、更新時には苦土炭カル、熔リンを十分に施用する必要があります。
アルファルファは夏場高温・干ばつ地帯に適応しているために、適する土壌pHも高く、カルシウムも十分に必要なことから、栽培に当たっては、土壌酸度の矯正が必要です。炭カルの施用はアルファルファの根の生育を阻害するアルミニウム、鉄、マンガンの抑制、カルシウム、マグネシウム、リン酸の利用促進、土壌微生物の活性促進の効果があります。目標土壌pHは他の草種よりも高めの6.5以上です。
(2)混播の考え方(播種量等)
北海道は冬季と夏季の条件から大まかに、①:雪が多く土壌凍結の浅い道央・道北、日高山脈山ろく、②:雪が少なく土壌凍結が深く入り夏場の気温が高い苫小牧、十勝内陸部、北見網走、③:②の中で夏季の気温が高温にならない根釧地域、の3タイプに分類されます。
アルファルファは混播で利用されることが多く、混播相手は夏季間が高温に推移する地域ではオーチャードグラス中生品種や晩生品種、夏季間比較的冷涼に推移する地域ではチモシー早生との混播が適しています。
アルファルファは2、3番草の生育が旺盛になるので、混播する種子量は2~5kg/haの範囲とし、イネ科は15~23kg/haの範囲で設計します。チモシーの場合は2番草以降、アルファルファに抑制されやすいので、アルファルファの播種量を少なめにします。
アルファルファを混播するメリットは、ギシギシに適用のある除草剤「ハーモニーDF」の薬害が少ないことがあげられます。同薬剤の散布により、アカクローバは完全枯死してしまうためアカクローバに代わってアルファルファが利用されるケースが増えました。ちなみに、シロクローバは甚大な薬害が生じますが完全には枯死せず、後に回復します。土壌凍結が浅くギシギシが凍死することが少なくなり、加えてスラリーなどの糞尿を多投するようになったためにギシギシの発生が非常に多くなっております。アルファルファは「ハーモニーDF」だけでなく「アージラン液剤」を散布しても薬害が少ないことも特筆するところです。
(3)根粒菌の利用
アルファルファは根に根粒を作り(写真 1-1)、養分をアルファルファ根粒菌に供給し、その代わりに根粒菌は空気中の窒素を利用し易いように固定してアルファルファへ供給しています。この関係を共生と言います。根粒菌は、マメ科植物に共生する菌ですが、アルファルファに共生する菌とアカクローバに共生する菌は異なり(寄主特異性)、それぞれの草種・作物に特有の菌が存在します。
アカクローバ、シロクローバは栽培の歴史が長く、新墾地(山を切り開いて造成する草地)以外には菌の接種はほとんど必要ありませんが、アルファルファは栽培された草地が少なく、土壌中には菌がほとんど存在しないといってよく、根粒菌の接種が必要です。現在販売されている種子は根粒菌を炭カル等でコーティングしたものであり、安定した菌の着生が期待されます。
菌の接種ばかりでなく、その菌が着実にアルファルファと共生するような栽培管理も必要です。詳細は別稿「アルファルファの栽培と管理 4.アルファルファ草地の施肥方法」をご参照ください。更新時に速やかに根粒菌を着生させる栽培管理が必要になります。
また、アルファルファの根粒菌が十分に増殖している草地では栽培がより容易になりますので、はじめて栽培される方は、1~2kg/10a程度のアルファルファを混播し、根粒菌を増殖させるところからはじめるのが良いでしょう。少しのアルファルファを混播することにより土壌中の根粒菌が増加するため、次に栽培する際には初回よりもアルファルファが定着しやすくなります。
※ 本文中の除草剤は、2023年8月現在農薬登録のあるものを掲載しています。