(1)更新時の施肥
播種時の肥料はリン酸を多めに施用し根の発育を促進させ、窒素、カリは雑草の生育を促進させるために少なめですが、発芽後の生育が緩慢で葉色が淡くなり、病害が発生するようであれば、追肥用の肥料を施用します。更新方法により施肥量や施肥方法が異なります(表 2-1、表 2-2)。
造成・完全更新時に有機物を施用する場合、堆厩肥の施用上限量は火山性土において5t/10a、低地土・台地土においては6t/10a程度とされています。スラリーの施用上限量は、更新翌年の肥料窒素換算量として4㎏N/10a相当(平均的な濃度のスラリーで4t/10a程度)とされています。これらの有機物を施用した場合は、播種時の施肥量からは減肥せず、維持管理時(播種当年に利用する場合を含む)から行います。
日本の土壌は酸性化しやすいので石灰質資材の投入が必要です。造成・更新時における石灰質資材の施用方法については、表 2-3及び表 2-4を参考にしてください。
(2)維持管理時の施肥
堆厩肥を施用するときには、含まれる肥料分を差し引いて肥料を施し、また、マメ科割合に応じて窒素は加減します。マメ科割合が多い時には根粒菌による窒素供給を期待して窒素を少なめに、少ない時には窒素を多めに施用します。
①チモシー主体採草地への施肥
チモシーは年間2回刈り利用が多いですが、年間合計収量に占める1番草の割合は60%以上であることが一般的であるため、早春に重点を置きます。ただし、1番草刈取り後に発生する新分げつが、2番草と翌年1番草を構成するため、1番草刈取り後の追肥も重要な役割をしています。したがって、年間2回刈り利用の場合、早春:1番草刈取り後=2:1、3回刈り利用の場合は、早春:1番草刈取り後:2番草刈取り後=3:2:1の割合で施用することが推奨されています。
施肥時期について、早春ではチモシーの萌芽期頃、1番草刈取り後では、刈取り後5~10日前後の独立再生長期が推奨されています。刈取り後の施肥が遅れると、新たに発生する分げつの生育が不十分となり、2番草の収量低下につながるだけでなく、作業機械の走行により再生茎を痛めてしまうことにもなります。
②オーチャードグラス主体草地への施肥
オーチャードグラスは年間3回刈取らなければ、嗜好性が劣ります。チモシーよりも年間合計乾物収量に占める1番草の収量が少なく、各番草間での収量差が大きくないことから、早春、各刈取り後の施肥はほぼ均等で良いとされています。また、オーチャードグラスは3番草刈取り後の秋に分げつが発生するため、秋施肥の効果が高い草種です。したがって、施肥配分としては早春:1番草刈取り後:2番草刈取り後:秋=1:1:0.7:0.3の割合で施用することが推奨されています。秋施肥をしない場合は、早春:1番草刈取り後:2番草刈取り後=1:1:1となります。
③マメ科割合の異なる草地への施肥
マメ科割合の多い草地では、マメ科割合を維持し根粒菌により固定される窒素を最大限に利用するために窒素を少なめに、マメ科割合の少ない草地においては窒素を多く施用することが推奨されています。例えば、チモシー採草地(道南・道央・道東、低地・台地・火山性土)の場合、マメ科率30%以上であれば年間窒素施肥量は4kg/10a、マメ科率5%未満であれば16kg/10aです。
④維持段階の炭カル追肥
土壌pHが6.0以下であれば、維持管理時においても定期的に炭カル等の土壌改良材を投入し、土壌pHを維持することが必要です。pH5.5~6.0の場合は、40kg/10a/年とされており、2~3年分を一括施用することも可能です。pH5.5未満の場合、0~5㎝土層のpHを6.5に改良するのに必要な量を投入します(表 2-4)。