<乾乳牛飼養のシステム> 米国ウイスコンシン州立大学・ギャレット・オッツエル博士は、群から群へ牛を移動する場合、最も危険な時期は、分娩9日前~2日前であると言っています。それは、群移動の際にストレスを受けて、乾物摂取量が低下し、脂肪肝やケトーシスの原因になるからです。それらを考えると、クロースアップ群への移動は分娩予定日が早まることも加味すると、分娩3週間前には移動することが望ましいと思われます。 また、博士は分娩ペンに長くいるとトラブルが多かったという調査結果も紹介しています。それは、2牧場において分娩ペンに3日未満と3日以上の牛の牛を比べると、分娩後2~3カ月以内の死亡、淘汰は長いほうが約3倍多かったというものです。ですから、施設的にはクロースアップ群に併設された分娩ペンがあり、分娩兆候が見られたら移動するというのが望ましいということになります。
<乾乳牛飼養施設の検討> 乾乳牛の飼養施設を、次のステップで検討してみてはどうでしょうか? ① 現状の施設で乾乳牛に適した場所を探す。 ② 適当な場所が見つからなければ、簡易乾乳舎について検討する。 ③ 費用に余裕があれば、最適な乾乳舎を検討する。
<タイストールでの飼養> 乾乳牛を繋留することはできるだけ避けます。特にフリーストールで搾乳牛を飼養している場合は、繋留することによりストレスがかかります。 例を挙げると、育成期をルーズバーンもしくはフリーストールで飼養しており、分娩直前直後にタイストールに移動すると、第四胃変位などのトラブルを起こすケースがあります。初産牛は低カルシウム血症になりにくいので、それによる併発も少ないですが、この場合は今まで繋留の経験がなく、大きなストレスを受けたためトラブルを起こしたと思われます。 他の例では、フリーストールを新築し、既存のつなぎの牛舎を利用して乾乳牛の飼養しているケースがあります。それまでも乾乳牛はつなぎで飼養してきましたが、フリーストールに移行してから、トラブルが多くなるような場合は、環境の変化、急につながれたことによるストレスが原因と思われます。 やむをえず、乾乳牛をつなぎ牛舎で飼養するならば、以下のことを注意すべきです。 ① ニュヨークタイストール、上下支点方式、左右支点方式などのタイストールにする。 ② クッション性のある牛床マットを敷くか、多量の敷料を入れる。 ③ 少なくとも分娩の1カ月前には、移動する(分娩直前には移動しない)。 ④ 搾乳牛と乾乳牛の飼料の品目を極端に変えない。特に粗飼料は、搾乳牛に給与している 粗飼料を少しでも給与していると、移行がスムーズである。 ⑤ 分娩の際は、なるべく分娩房を利用する。
<ルーズバーンでの飼養> D型ハウスなどのルーズバーンを利用して乾乳牛を上手に飼っている牧場があります。この場合共通していえることは多量の敷料を入れて、衛生状態とクッション性を保っていることです。ルーズバーンは牛の自由がきいてよいのですが、問題は良い寝床の状態を維持できるかです。 下記図は大腸菌感染のリスクを表したものです。これを見ればわかるように、乾乳直後と分娩直前は大腸菌に感染するリスクが高くなっています。乳房炎などの感染症を防ぐには、ルーズバーンの床の衛生状態が重要になってきます。
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