(1)土壌pHの調整
毎年の化成肥料の施用や雨水により、土壌は酸性化していきます。必要に応じて炭カルなどの石灰質資材でpH矯正をします。
北海道施肥ガイドに記載される基準値はpH5.5~6.5ですが、望ましくはpH6.0~6.5を目標とします。
炭カルの必要量は以下の通りです。
(2)堆厩肥の減肥
堆厩肥、スラリーの肥料成分については各農家の条件によって多少バラツキがあります。分析をするのが確実ですが、分析値がない場合のおおよその目安は以下の通りです。
①堆厩肥分の減肥
堆厩肥から供給される窒素は有機態窒素が主となります。これらは分解されて効くまでに時間がかかるので、窒素は追肥分から減肥します。基肥から減肥しないように気をつけます。
堆厩肥を4~5t/10a施用した場合、堆厩肥のみで追肥分の窒素を概ね賄うことができます(リン酸、カリは基肥から減肥します)。
②スラリー分の減肥
スラリーから供給される窒素は、堆厩肥よりも無機態窒素を多く含むため早い時期から効きます。
そのため窒素は基肥と追肥から半分ずつ減肥します。全て基肥から減肥しないように気をつけます。
一般的な濃度のスラリーを3t/10a施用した場合、基肥から3㎏/10a、追肥から3㎏/10aの窒素を減肥できます(リン酸、カリは基肥から減肥します)。表 1-3は分析値がない場合の肥料養分量を記載しています。
(3)土壌診断による化成肥料の減肥
必要以上の施肥はコスト高と飼料品質の悪化につながります。土壌分析を行い、その結果をもとに適正施肥に努めることが賢明です。以下に「北海道施肥ガイド2020」で定められている土壌診断に基づく施肥対応を紹介します。
①窒素
例)収量水準 :乾物1,500㎏/10a (乾物率30%計算)
熱水抽出性窒素 :5㎎/100g
表 1-4に収量水準(乾物1,500㎏/10a)と熱水抽出性窒素の分析値(5㎎/100g)をあてはめ、窒素の施肥量を求めます。 この場合、必要な窒素施肥量は16㎏/10aとなります。
②リン酸
例)有効態リン :乾物6mg/100g(=基準値未満)
作付け年数 :1年目
表 1-5に示される有効態リン酸の基準値は10~30mg/100gですが、例に示す分析値では6mg/100gと基準値未満となっています。有効態リン酸含量5~10mg、作付け1年目の条件より導かれるリン酸の施肥率は130%となります。
この場合、必要なリン酸施肥量は施肥基準の130%(1.3倍)となります。
例えば施肥基準(次項 2.具体的な施肥設計を参照)にリン酸の施用量が18~20kg/10aと示されていた場合、この数値を1.3倍した25㎏/10a程度の施肥が必要、ということになります。
③カリウム
例)交換性カリウム :40 mg/100g (=基準値以上)
表 1-6に示される交換性カリウムの基準値は15~30mg/100gです。例に示す分析値では40mg/100gなので基準値以上となります。表からは施肥率60%が導かれます。
この場合、必要なカリウム施肥量は施肥基準の60%(0.6倍)となります。
例えば施肥基準(次項 2.具体的な施肥設計を参照)にカリウムの施用量が10kg/10aと示されていた場合、この数値を0.6倍した6㎏/10a程度の施肥を行なえばよい、ということになります。
④苦土
例)交換性苦土 :50 mg/100g (=基準値以上)
表 1-7に示される交換性苦土の基準値は25~45mg/100gです。例に示す分析値では50mg/100gなので基準値以上となります。表からは施肥率0%が導かれます。
この場合、苦土の施用は必要なし(0%)となります。
施肥基準(次項 2.具体的な施肥設計を参照)では苦度の施肥量は畑作物に準じ低地土で3㎏/10a、その他の土壌では4~5kg/10aとされていますが、例に示すような交換性苦度の数値がある場合は苦土の施用はしなくて良い、ということなります。
(4)追肥の必要性について
追肥をすると収量が増加します(図 1-1)。追肥の効果の大きさには播種後の雨量が影響します。雨が多い年には肥料の流亡が多く、生育後半に肥料切れが起こります。毎年は難しくても、その年の気候に応じて追肥することが重要です。
追肥の時期は4~5葉期(7葉期までに)に行います。晩い時期の追肥は作業機械との接触による折損や、徒長して倒伏のリスクが高まる可能性があります。
追肥の窒素量は4~5kg/10a程度が目安です。基肥は8~10kg/10aを上限とします。