2.具体的な施肥設計

 北海道では「北海道施肥ガイド」に記載される施肥基準や土壌診断基準に基づいて施肥設計を行います。以下に挙げた例に基づき説明します。
- 条件 -
(a)十勝中央部の火山灰土、基準収量6,500kg/10a(乾物1,950kg)
(b)春に堆厩肥を3t/10a施用、トウモロコシ作付け1年目
(c)土壌分析値:
  熱水抽出性窒素:9mg/100g、リン酸:8mg/100g、カリ:10mg/100g、 苦土:30mg/100g
(d)基肥銘柄:S380(N-P-K-Mg:13-18-10-4)、重焼りん(P:35%)
(1)基本の施肥基準の決定
①エリアの選択
 条件(a)から下図の「地帯区分」でエリアの選択をします。今回は十勝中央部なので16を選びます。黄色でマークした部分です。

②施肥標準量の確認
 表 2-1に示す「施肥標準」から基本の施肥標準量(kg/10a)を確認します。
 地帯区分は選択した16を確認します。また条件(a)から火山灰土、基準収量6,500kg/10aがわかるので該当箇所を確認します。
 該当するN:P:K標準量を確認すると(赤色でマーク)18:20:11となります。苦土は注釈を参考に4kg/10aとします。これが標準の施肥量(表 2-2)になります。

③土壌分析値を反映させて施肥量(必要量)を計算
 ア.熱水抽出性窒素
  条件(a)、(c)の乾物収量:1,950kg/10a、熱水抽出性窒素の分析値:9mg/100g(赤色でマーク)を
 元に表 2-3から必要となる値を算出します(青色でマーク)。
  条件を元に表から算出すると15.5kg/10aになることがわかります。今回の条件(乾物収量1,950㎏)
 では表に該当する乾物収量の数値がないため、乾物収量1,900~2,000㎏の数値より計算して算出
 しています。

 イ.リン酸
  条件(b)の作付け1年目、条件(c)のリン酸:8mg/100gを元に表 2-4より確認します。
  表 2-4ではリン酸の基準値は10~30mg/100gであり、今回の分析値8mg/100gは赤色でマークした
 「基準値未満」の値となります。
  また、作付け1年目の条件を考慮すると施肥標準に対する施肥率は130%になります。これは施肥
 標準量を1.3倍した値を必要とすることを示しています。

 ウ.カリ
  条件(b)のカリ:10mg/100gを元に表 2-5より確認します。
  今回の分析値10mg/100gは赤色でマークしている「基準値未満」の値になります。該当する箇所を
 確認すると施肥標準に対する施肥率は130%になります。これは施肥標準量を1.3倍した値を必要と
 することを示しています。

 エ.苦土
  条件(b)の苦土:30mg/100gを元に表 2-6より確認します。
  今回の分析値30mg/100gは赤色でマークしている「基準値」の範囲内の値になります。基準値という
 ことから施肥標準に対する施肥率は100%になります。このことから必要量は施肥標準量から変化は
 ありません。


 以上をまとめると各要素の必要量は、窒素(N)は15.5kg/10a、リン酸(P)は標準量の1.3倍量、カリ(K)は標準量の1.3倍量、苦土(Mg)は標準施肥量通りになります。基本の施肥標準からの変更は以下の表 2-7に示す通りとなります(青色参照)。

(2)施肥量の設計
①堆厩肥施用量を元に施肥量を設計
 表 2-8を元に、条件(a)の火山灰土、条件(b)の作付け1年目でのという条件で堆厩肥を施用した場合、堆厩肥から共有される肥料養分量(N:P:K)は其々1:1:3(㎏/原物t)となります。

②基肥施用量の設計
 表 2-8に記される堆厩肥からの養分供給量(㎏/原物t)を元に、条件(b)の3t/10aを施用した際の条件(d)に示す基肥の施用量は一例として表 2-9のように設計されます。