(1) 発芽・出芽不良
トウモロコシの発芽や出芽の不良は、低温・旱魃などの気象条件や肥培管理が不適切な場合に発生します。ほとんどの場合は肥培管理で改善できます。

(2) 養分欠乏・養分過剰症
- ①窒素欠乏
- 窒素が不足すると淡緑色になり光合成能力が低下し、さらに進展すると黄色くなります。退色は下位葉から始まり、上位葉は一般に緑色に保たれます。欠乏が長びくと新葉の葉幅も減少し、伸長が停止します。窒素はトウモロコシの生育後期まで吸収されるため、十分な肥培管理が必要です。
- ②リン酸欠乏
- リンは作物のエネルギーの代謝に関与し、細胞分裂においても不可欠な元素です。リンが不足すると葉幅が狭くなり、葉にアントシアンが発生し紫色になります。アントシアンの蓄積には品種間差があります。特に初期生育時に気温が低いと、この症状が出やすくなります。リン欠が生育後期まで続くと、雌穂の登熟が遅れ不稔が発生します。
- ③亜鉛欠乏
- 乾性火山灰土や有機物が少ない土壌で発生しやすく、またリン酸と拮抗作用があるためリン酸過剰の圃場で発生しやすくなります。4葉期以降に生育中の葉の中央部が黄白化し、さらに進展すると白化し壊死部ができ、中肋がもろくなります。個体全体が矮小化し、雌穂も矮小奇形化します。
- ④窒素過剰
- 未熟厩肥の多投などで、窒素が過剰になると茎葉が繁茂し、徒長しながら軟弱に育ち、病害にかかりやすくなります。また絹糸抽出期が遅延し、登熟不良になり雌穂不稔も発生しやすくなります。
(3) 雌穂不稔
- ①気象(環境) 要因
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- 幼穂形成期における異常低温
トウモロコシの幼穂は6-7葉期までに形成され、この時期に異常な低温(10℃前後) を経験すると、幼穂(雄穂や雌穂の原基)が十分に形成されず不稔の原因になります。 - 受粉時期の異常高温や旱魃
異常高温や干ばつは花粉の発育と充実を不良にし、不稔の原因になります。 - 受粉時期の長期多雨
花粉は雨に当たると破裂し、受精ができなくなります。 - アブラムシの異常発生
雄穂に多量のアブラムシが付着すると、花粉の飛散ができず、不稔になります。
- 幼穂形成期における異常低温
- ②肥培管理要因
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密植栽培
品種にもよりますが密植すると不稔が発生しやすくなります。播種が不正確で2本立てになった場合、個体間で養分競合となり不稔になります。最適栽植本数の確保と正確な播種(1本立て)が重要です。 - 肥料不足(主に窒素とリン酸)
- 雑草害
雑草が繁茂すると、養分競合で不稔になる場合があります。 - 除草剤による薬害
- 倒伏、折損
雌穂を大きくする養分は着雌穂節より上の葉から雌穂へ送られます。そのため生育初期の倒伏や着雌穂節前後で折損が発生すると、不稔が発生しやすくなります。
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密植栽培
(4) 霜害
生育初期の晩霜と秋の早霜により発生します。晩霜の場合、3~5葉期までであれば生長点は地下に位置することが多く、植物体に枯死が見られても生長点に影響がなければ多くの場合回復が見込めます。その場合は、早生品種を播き直すより回復個体を収穫した方が収量も見込めるため、そのまま栽培を継続することが得策です。生長点が枯死ダメージを受けた場合は、回復不可能でその後枯死するため、播き直しをするかその他作物への切換えを行います。
一方、早霜の場合は霜にあたる程水分含量や栄養成分が低下します。軽い霜ならば水分含量が若干低下する程度で大きな問題はありませんが、極端な霜は栄養成分や品質の低下につながるので、登熟が進んでいなくても、早めに収穫することをお勧めします。