繁殖と経済性

繁殖

繁殖成績は経営成果に大きく影響しますが、日々の作業時にはその重要性をなかなか認識できないものです。そこでここでは、繁殖係数を客観的な経済価値に試算している例をいくつか紹介します。

  • 平均分娩間隔と経済価値
    平均分娩間隔の延長は依然として止まらず、平成17年度の北海道では428日となっています。平均分娩間隔の延長は生産乳量や生乳生産効率を低減させ、獲得産子数も減少します。個体ごとの適正な分娩間隔は泌乳能力によっても異なるでしょうが、平均分娩間隔が1日延長することによる損失額は1日あたり1,100~1,600円と見積もられています。
  • 空胎日数と経済価値
    分娩後再受胎するまでの空胎日数が120日を越えると、乳代よりも経費が増加して収益は赤字に転じ、その後270日まで延長した場合の累積収支額では、泌乳後期の低泌乳や乾乳期間の延長、授精費用の追加等により74,000円もの赤字になるとの試算があります(表1)。
繁殖と経済性1.png
  • 妊娠の価値と授精コスト
    授精によって牛が妊娠するとその経済価値は13~16万円との評価があります。一方、授精技術料を4,500円(1回目のみ)、精液代3,000円、受胎率40%(平均授精回数2.5回)とすると、授精のコストは12,000円(=4,500+(3,000×2.5))と計算されます。また、発情が明瞭でなく、その確率が50%のような場合では19,500円と試算されます。いずれにしても、妊娠することの価値はより大きく、数多く授精するほうが得策との考え方が導かれます(黒崎尚敏; Dairy Japan 2005,12)。
  • 初回分娩月齢と経済価値
    育成牛の初回分娩月齢も経済性に大きく影響します。初回分娩月齢を27ヶ月から24ヶ月まで3ヶ月早めると、育成および分娩後の飼料代と乳代から計算した36ヶ月齢時点での期間経費の差は103,000円にもなります(表2)。
繁殖と経済性2