例えば、長期間貯留したスラリーを曝気開始した直後やそのまま汲み上げて散布した場合、どうでしょうか?硫化水素などの臭気が大きな問題になります。これらは臭いだけでなく植物にも障害が出ることがあります。特に硫化水素などは根を傷めてしまうような障害が出ます。この硫化水素は嫌気(空気のない)的な状態から液を動かし始めたときに特に強く感じます。
しかし、この嫌気的な状態というのはそれだけでなく、病害等の原因菌は嫌気性を好むものが多いのも事実です。
曝気処理を行うことで、嫌気的な状態を改善させ、硫化水素等のガスを除去し、病害等の原因菌の繁殖を抑えます。その他に、すぐに分解できるような有機物が多いと、それを施用した場合、易分解性の有機物を土壌中の微生物が一気に分解しようとするので、そこで出てくる炭酸ガスや他のガス等による障害が出てしまうこともあるので、曝気処理によりある程度分解することで、その障害を回避します。

上記の内容は植物や土壌に対するメリットで、このほかに実質的な利点を考えていきたいと思います。
スラリーや尿を処理する時に困っている点を考えると、臭気、貯留できる場所、汲み上げ運搬、散布時が挙げられます。これらの点から曝気処理を考えていきます。
まず臭気については、曝気処理を行うことで硫化水素は曝気開始時に強くなりますが、すぐに落ち着いてきます。
次に、長期間ただ貯留していくと貯留槽の表面にはスカムが浮び汲み上げを邪魔したり、貯留槽底部には汲み上げにくい汚泥層ができ、底部汚泥層は硬くなり汲み上げ作業に非常に労力を使います。それだけでなく、底部の硬い汚泥層は汲み上げられないためどんどん溜まっていくと、貯留槽自体の容量がだんだん小さくなってきてしまうこともよく見受けられます。
そこで曝気処理を行うと、槽内が攪拌されスラリー自体の流動性も良くなることで汲み上げ作業も楽になり、底部汚泥層も汲み上げることができるため槽内の容量が確保できるようになってきます。 このほかに、散布時の臭気問題や散布後の土壌への浸透が良くなり機械での作業がしやすくなるなどの利点も出てきます。
