現在、飼料計算を実施し、給与した飼料全体を栄養学的に評価する際には、様々な栄養成分がその指標として利用されています。その一部を紹介します。
- <水分>
- 飼料中の『水』の含量。飼料の品質や乾物摂取量に影響します。
- <乾物>
- 飼料成分中の、水分以外の成分の総和。この中に全ての栄養成分が含まれます。NRC2001では、体重、乳脂補正乳、泌乳日数を乳牛乾物摂取量の要因として取り入れています。環境、給与体系などの要因は含まれません。乾物摂取量は他の栄養素の要求量へも影響します。
- <蛋白質>
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粗蛋白質(CP)は、区分としてA・B・Cの分画に分けられます。
- A分画:ルーメン内で瞬時に分解される区分。
- B分画:ルーメン内で分解もしくはバイパスする区分。
- C分画:ルーメン内で分解されない区分。
また、乳牛のルーメン内での分解性を表す指標として、RDP・RUPという表現が用いられます。以前、この指標はDIP(ルーメン内分解性蛋白質)、UIP(ルーメン内非分解性蛋白質)と表現されていましたが、NRC2001より、前記表現が採用されるようになりました。これは、以前のNRCでは、乳牛の状態に関わらず一定の値として評価されていましたが、NRC2001より『乾物摂取量が多くなると、ルーメンの通過スピードが速くなりルーメン内で分解される割合が低下する』という理論に基づいています。実際には、以下の様な式でRDP、RUPが算出されます。
●RDP(A分画+B分画のルーメン内で分解される部分) =B(Kd/(Kd+Kp)) Kd:ルーメン内分解速度 Kp:ルーメン内通過速度 ●RUP(C分画+B分画のルーメン内をバイパスする部分) =B(Kp/(Kd+Kp))
- <代謝蛋白質:MP>
- ルーメン以降で消化され、アミノ酸として小腸で吸収される純蛋白として定義されています。要求量は生体維持、妊娠、成長、乳生産に必要な蛋白質の和により求められ、供給量は微生物体蛋白、バイパス蛋白、内因性蛋白質の和により求められます。
正味エネルギー(育成牛の場合は、代謝エネルギーMEが利用されます)。要求量は生体維持、乳生産、成長、妊娠に必要なエネルギーの和により求められ、供給量は給与飼料のエネルギーをDMI(乾物摂取量)の増加に伴う消化率の低下を考慮しディスカウントされ算出されます。 非繊維性の炭水化物区分。糖、デンプン、ペクチン等を含みます。次式により算出されます。
●NFC=100-灰分-脂肪-粗蛋白質-NDF-NDFIP *NDFIP:中性デタージェント不溶性粗蛋白質
酸性の界面活性剤で処理して求められる繊維区分。セルロースやリグニンを含みます。 中性の界面活性剤で処理して求められる繊維区分。現在、飼料中の炭水化物は下図の様に区分されます。

- <カルシウム Ca>
- 骨・歯の形成、筋肉収縮、神経刺激伝達などに関与します。
- <リン P>
- 骨・歯の形成、エネルギー代謝などに関与します。
- <マグネシウム Mg>
- 骨・歯の形成、酵素の活性化などに関与します。
- <カリウム K>
- 神経・筋肉興奮、浸透圧などに関与します。
- <塩素 Cl>
- pH・浸透圧調整、胃酸成分などに関与します。
- <ナトリウム Na>
- 骨・歯の形成、筋肉収縮、神経刺激伝達などに関与します。
- <硫黄 S>
- アミノ酸、ビタミン、補酵素の成分となります。
- <コバルト Co>
- ビタミンB12の成分です。
- <銅 Cu>
- 電子伝達系に関与します。
- <ヨウ素 I>
- 甲状腺ホルモンの構成成分となります。
- <鉄 Fe>
- エネルギー代謝に関与します。
- <マンガン Mn>
- 糖蛋白合成酵素を活性化させます。
- <セレン Se>
- 過酸化脂質や過酸化水素を除去します。
- <亜鉛 Zn>
- 金属酵素の構成要素です。
- <ビタミンA>
- 視覚、皮膚および粘膜を維持し、成長、細胞分化、骨の構造を保護します。
- <ビタミンD>
- カルシウムの吸収を促進し、成長、骨・歯の発育を促進します。
- <ビタミンE>
- 細胞粘膜を保護し、生殖腺維持、筋肉代謝正常性を維持します。
- <メチオニン>
- アミノ酸の一種で、制限アミノ酸です。代謝蛋白(MP)比で2.4%が推奨されます。
- <リジン>
- メチオニン同様、制限アミノ酸です。代謝蛋白(MP)比で7.2%が推奨されます。
- <粗飼料比率>
- 粗飼料と濃厚飼料の比率を表します。粗飼料乾物÷全乾物で求められ、35~50%が推奨されます。
- <粗飼料NDF>
- 全乾物に占める、粗飼料NDFの割合を表します。23%が推奨されます。