TMRの中から濃厚飼料を選び食いすると、牛は亜急性ルーメンアシドーシスとなり、毛ヅヤの悪化、蹄病の発生、乳脂肪率の低下、乾物摂取量の低下、飼料効率の低下などの問題が発生します。ここでは、TMRの選び食いを防止するための取組の1つとして、加水を紹介したいと思います。
- 1.加水とは
- TMRを混合する際に、水を添加することを言います。
- 2.どのような時に加水すべきか
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- 1) TMRを選び食いしている時に、加水を実施すべきです。
- 2) 選び食いしやすいTMRは、手に取って軽くふるって見れば容易に判断することができます。粗飼料の水分が低かったり(70%程度を下回るもの)、切断長が長かったりすることで、濃厚飼料と分離しやすいTMRは、指の隙間から濃厚飼料だけがこぼれ落ちます。
- 3) また、牛の採食状況を観察することも大切です。写真1のように、TMRに穴を掘って採食している場合は、加水を実施すべきです。
- 4) ロールパックサイレージを利用したTMRでは、極端に選び食いし易くなります。水分や品質にもよりますが、牛1頭当たり3kg/日程度のロールパックサイレージを混合している場合は、注意が必要です。
写真1.TMRを掘って、下に残る濃厚飼料を先に選び食いしている。
5)TMRの水分が高い(65%程度)場合でも、選び食いしているならば加水の効果があります。
- 3.加水の方法
- どのくらい加水すればよいかという目安は特にありません。1頭2L程度から始めて、選び食いしなくなるまで増量します。
水量が少ないホースなどで加水を行うと、TMRミキサーの下から流れ出てしまいます。ある程度の勢いのあるホースや、バケットローダーに水を溜めて一気に添加するなどの工夫が必要です(写真2)。
写真2.
- 4.現地事例
- グラスサイレージの在庫量が足りなくなりそうであったため、ロールパックサイレージを1頭あたり4.5kg程混合していました。このTMRの水分は65%程でしたが、明らかに選び食いしていました。実際に、毛ヅヤの悪化、蹄病、乳量の低下などの問題が発生していました。
1頭あたり8Lの加水を行い、同時に、乾物摂取量を高める目的で、粉パルプを1頭あたり2kg混合しました。
加水の前後で、TMRの物性が変化した。粗飼料表面が濡れており、濃厚飼料が分離しにくくなっていることが感じらました(写真3)。
写真3.加水前後のTMRの変化
加水開始から2週間経たずに、乾物摂取量が1.9kg高まり、平均乳量が2.0kg増加しました(図1.)。
図2.加水前後の平均乳量(6月5日加水前、6月18日加水後)
加水を実施する手間はとても大変ですが、乾物摂取量の増加や、牛の状態の改善など、その効果は意外とわかりやすく、効果的な取り組みです。牛がTMRを選び食いしている兆候が見られたら、加水の実施を検討してみることをお勧めします。