サイレージの取り出し方に気を配りましょう

 サイレージを取り出して給与する場合、一般的な方法は、トラクターやホイールローダーのバケットで表面を削り取って給与する方法です。しかし中には、サイレージグラブ(写真1)や、サイレージカッター(写真2)で切り出して使用する場合もあります。写真3は、サイレージグラブでのサイレージ取り出し断面です。バケットで削り取る場合にもサイレージの取り出し方には注意が必要ですし、サイレージカッターなどの道具を使用する場合は、更に気を配る必要があります。

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写真1.サイレージグラブ

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写真2. サイレージカッター

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            写真3. サイレージカッターでの取り出し断面

 何故サイレージの取り出し方に注意することが重要であるかを、以下に示します。
 下図1は、サイレージの詰め込み作業のイメージです。原料草は、ゆるい傾斜をつけて、薄く拡散しして詰め込んでいきます。そうすると、原料草は層状に分布することがわかります。こうした時に、仮に図1の色違いの部分の原料草が、異なる草地、異なる植生(マメ科が極端に多いなど)であったならば、飼料成分が異なることが想像できます。そのため、サイレージを取り出す際に、上段部分を多く、もしくは下段部分を多く取り出すと、日によって牛に給与される飼料の栄養濃度が変わるという事態になります。サイレージカッターやサイレージグラブは、1つかみの奥行きが90cmほどもあるため、1日に1面を取り出されないことが多く、上段、もしくは下段のサイレージのどちらかが、日によって多く給与されるという状況が起こり易くなります。

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 これから示すのは、実際のある牧場の状況です。この牧場では、サイロ切り出し面のサイレージ発酵品質が、層によって大きく異なっていると感じられたため、試験的に層を6つに分けて粗飼料分析を行いました(図2)。その結果が表1です。

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 分析値を見て驚いたことは、水分では最大10.9%、CPでは最大8.4%、NFCでは最大6.6%、TDNでは最大10.8%もの差があることがわかりました。発酵品質では、V SCOREが合格範囲である85.0の部分もある一方で、4.4というかなり劣質な部分も存在しました。
 では、最も影響が大きいと思われる部分を取り上げて飼料計算を行うと、どの程度の栄養成分の差が生じるのでしょうか。これを試算したのが下表2と表3です。表2のように、上2の粗飼料分析値を用いて、丁度よいTMR濃度となるように飼料計算を行いました。そして、上2の成分をそのまま下3の成分に入れ替えてみました。

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 飼料成分は、表3に示すように、2番サイレージの成分を入れ替えることで乾物量が2.0kgも減少しました。粗飼料割合は5%も低下しました。ルーメンアシドーシスが起きる可能性がかなり高くなっています。CPは0.9%も高くなり、タンパク過剰状態です。とても大きな成分の差となりましたが、もしサイレージを1番草と併用していなかったとしたら、影響は更に大きくなります。
 このような事態が起きるため、サイレージは極力1面をまんべんなく取り出すことが望ましいと考えられます。サイロが大きくて、1日1面を使いきれない場合も、上段のサイレージと下段のサイレージを混合した方がよさそうです。実際には、同じ層であっても左側と右側で飼料成分が異なることがあるので、ベストの方法ではありませんが、上下の差よりは影響が少ないものと推測されます。
 それと、忘れてならないのは、粗飼料分析サンプルの採取方法です。粗飼料サンプルは、使用しているサイレージ全体を代表するサンプルとなるように、1面からまんべんなく取り出します。表面が空気にさらされて乾いているように感じられる場合は、十数cm奥のサイレージを取り出すことが望ましいです。