膝・飛節の疾病について

 牛は寝起きの際に折り曲げた前膝を地面につけ、体を前に乗り出すようにして後肢から寝起きをします。繋ぎ飼い牛舎の場合、スタンチョンや繋留ロープ、狭い牛床や濡れた牛床、飼槽などが障害となり動作が制限されてしまうため、不自然な姿勢で寝起きをしがちになります。前膝や飛節はその度に牛床や飼槽の縁で圧迫され、摩擦や打撲が繰り返されると、やがて前肢には膝瘤、後肢には飛節周囲炎が発生しやすくなります。
また、削蹄が不適切で伸びすぎたり変形したりしている場合、或いは蹄病などがある場合には、寝起きの姿勢が不自然になり、受傷の機会は増加します。

【膝瘤(しつりゅう)】
(症状)
 前膝の皮下にある滑液嚢(のう)に液体が溜まって膨らみます。左右の両前肢に発症することが多く、人頭大にまでなるものもあります。
 初期には跛行は見られませんが、皮膚が肥厚したり、外傷を生じると、痛みのため屈伸に支障をきたします。

【飛節周囲炎】
(症状)
 飛節外側の脱毛、腫脹、肥厚から始まり、極めて慢性的に進行します。皮膚の擦過熱傷が化膿、潰瘍化するタイプと、皮下に嚢胞を形成し、やがて自壊して嚢胞内に出血、漿液、膿汁などが流出する飛節膿瘍や飛節軟腫、飛節外腫などと呼ばれるタイプがあります。
 両タイプとも病状が進行すれば疼痛のストレスにより跛行し、次第に痩せ細り、生産性は低下します。

 本症の原因は前述したように、寝起きの際に牛床や飼槽に四肢をぶつけることが主要因となり、また、不適切な削蹄や蹄病がこれらを助長します。予防策としては、定期的な削蹄と牛床の乾燥に努め、また牛床マットや敷料の確保に努めることが肝要です。繋留方法も、スタンチョンに比べて繋留ロープの方が優れていると言われており、更に繋留ロープには余裕を持たせるなどの処置を施し、牛の寝起きの行動を極力妨げないように工夫します。
また、蹄疾患の予防に努め、給与飼料への留意も必要です。

【ロコモーションスコア】
 跛行の程度を評価する方法が提唱されています。跛行はスコア1~5で評価を行い、1が正常となります。各スコアと乳量減、目標の関係は以下のようになります。

跛行スコア表1
跛行スコア表2