周産期病について

<低カルシウム血症>
   周産期病の中で最も発生率の多いのは低カルシウム血症です。これにより起こる神経過敏、進行性の筋力低下、強直歩行、起立不能、食欲不振などの症状が、第四胃変位やケトーシスの発生、泌乳量の低下や繁殖成績の低下など、様々な周産期病の原因となります。

周産期病について1

   発症牛については、カルシウムの静脈内注射が最も有効となります。予防策として、クロースアップ期のイオンバランス(DCAB)の調整、カルシウム給与量の制限、分娩後ではカルシウム剤の経口投与などがあります。
<ケトーシス>
   ①泌乳最盛期に要求量に見合うだけのエネルギーが供給されない場合の低血糖、②肝機能障害によるブドウ糖新生の減少、③酪酸発酵サイレージの多量給与などから、体内にケトン体が貯留して消化器障害や神経症状を示す状態をケトーシスと言います。臨床症状から、消化器型、神経型、乳熱型、継発生型に分けられますが、ケトーシスのほとんどは消化器型であり、その症状は、腹囲が巻き上がり、削痩が著しく、サイレージや濃厚飼料を食べずに乾草を好んで採食します。飼料の急変を避け、分娩後の飼料給与を適切に行うことが肝要です。分娩後の飼料用グリセリンの投与も効果的です。事後策ではなく、乾乳期管理を含めた予防策に重点を置くことが大切です。

<脂肪肝>
   『肝臓に流入する脂肪が多い』または『肝臓に入った脂肪が肝臓から抜け出せない』ことが原因で、肝臓中に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝と言います。乾乳期の過肥や低カルシウム血症により分娩後の採食量が低下している時、生産活動に見合うだけのエネルギーが不足すると、乳牛は体に蓄積している脂肪を動員してエネルギーを得ようとします。その状態が長期化した場合、肝臓が流入してくる脂肪を処理し切れなくなり、肝臓内に脂肪が蓄積する結果、脂肪肝となります。進行性の削痩や乳量の低下などが症状として表れます。ルーメンバイパス性のメチオニンやコリンは、肝臓への脂肪出納をコントロールする役目を果たすため、肝臓に掛かる負担を軽減するのに有効となります。

 
周産期病について2