
暑熱対策について
本来牛は、野生の生物であり、それを人の手で飼育管理する時点で、ストレスを避けることが出来ません。飼うからには、可能な限り自然な環境を最大限与えることが重要となります。 ✤温湿度指数(THI) |
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図1は平成17~18年の、帯広市の気温、湿度、THIの推移ですが、これを見ると、5月から9月までの5ヵ月間、ヒートストレスによる影響を受けていたことになります。 また、同様に平成17年に帯広市で最も暑かった8月6日の気温・湿度・THIを見ると、この日については、THIは昼夜を問わず、72を超えていたことになります(図2)。放牧管理等を取り入れている場合、少しでもTHIの低い夜間に放牧するなどの手段も良策でしょう。牛舎内管理においては、換気を実施することによって乳牛の体温およびTHIを下げることに繋がります。 |
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✤換気の効果 ✤夏場の牛舎温度による変化 ✤暑熱対策 |
✤送風を取入れた暑熱対策 ✤飲水量と乳牛の適切な関係 ✤暑熱対策の効果が乳量に反映 ✤換気状態の判断ポイント ✤体熱と換気について |
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✤栄養管理面から 1)エネルギー 暑熱環境下では、乳牛の要求するエネルギー量も増加する一方、飼料摂取量は低下傾向にあることから、給与飼料のエネルギー濃度を高める必要があります。しかしながら、エネルギー濃度の上昇はルーメンアシドーシス発生に繋がる危険性も高いことから、飼料中のNFC濃度は高くても39%以下に抑えるべきです。また、ヒートストレスにより乾物摂取量が低下している場合、エネルギー補給の意味で脂肪を添加することは効果がありますが、脂肪に対する考え方は、通常と同じです(給与飼料乾物中6~6.5%以下)。 2)蛋白質 給与飼料中の蛋白質不足は、産乳性に直接影響します。特に暑熱時、飼料摂取量が低下している際には、飼料プログラム中の蛋白質の濃度を再確認する必要があります。しかし、蛋白質の過剰給与は避けるべきです。蛋白質は炭水化物に比べて熱生産量が高く、過剰な蛋白質給与はヒートストレスを助長します。また、ルーメン内で余剰に生成されたアンモニアを処理する際にもエネルギーを使用し、その結果、血中の尿素態窒素濃度の増加(肝臓への負担増)が受胎率にも悪影響を及ぼします。ルーメン内分解性蛋白質、バイパス蛋白質のバランスをしっかりと取りましょう。 3)ミネラル 暑熱環境下において、乳牛のミネラルは汗として排出されるため、体内に蓄積されたものがどんどん無くなっていきます。人間の汗にはナトリウムが多く含まれていますが、乳牛の汗に最も多く含まれているのはカリウムであり、次いでナトリウム、マグネシウム等が多く含まれています。これらのことを考慮した飼料プログラムが必要となります。NRC2001に記載されている要求量より多めが推奨されています(カリウム:1.4~1.6%、ナトリウム:0.35~0.45%、マグネシウム:0.35%)。実際には、ヒートストレスの始まる3~4週間前から考慮することが有効です。 4)ビタミン ビタミンもまた、暑熱による負荷により消耗されていきます。ビタミンA、Eには、免疫力増進作用のあることが知られており、体内からビタミンが失われることは、乳牛のルーメン、繁殖、免疫機能を低下させます。これに高温多湿の条件が重なると、環境性・伝染性乳房炎の原因ともなります。 暑熱により乳牛が受ける影響(ヒートストレス)は、本格的に暑くなる前(5~6月頃)から、徐々に始まっています。暑熱対策としては、上記以外にも施設、粗飼料の品質、給与手段等、様々なポイントがありますが、出来るところから改善、対処し、乳牛の被るダメージを最小限に食い止めるよう、心掛けることが大切です。 |