枝肉の見方

   出荷した肥育牛の枝肉は、その牛の飼養管理がどうだったかを現わします。出荷したときは、できるだけ枝肉を確認するようにし、自身の管理の欠点を抽出し、その後のより良い管理に向けることをお勧めします。

1 品質のいい枝肉とは?
     ① 肉の「キメ」が細かいもの
     ② 肉色がよく、光沢(つや)があるもの
     ③ 水分が少ないもの
     ④ 締まりがよいもの
     ⑤ 肉に弾力があるもの
     ⑥ 乾燥しすぎていないもの
     ⑦ 脂質が白く、融点が低いもの
     ⑧ 骨が細いもの

2 枝肉の見方
   枝肉は、まず枝肉の全体(二分体、半丸)をみて全体的な出来栄えを捉える、次に胴切りによる切断面(第6~7肋骨間)をみて詳細を確認するようにしてください。

① 枝肉全体の見方

枝肉1

② めすと去勢の枝肉の違い
   枝肉を見るだけで、その牛がめすか、去勢かを見分けることができます。最も大きな違いは、モモの付け根にある「乳房脂肪」(めす)と「陰嚢脂肪」(去勢)です。乳房脂肪はなめらかですが、陰嚢脂肪は凹凸が顕著です。

枝肉2

   これまでは、“牛肉はめすに限る”と言われてきましたが、現在は肥育技術の改善により去勢でも肉質の優れた肉ができています。めすの肉の特徴は、一般に以下の通りです。
  • 肉のキメが細かい
  • 肉色はやや濃い目
  • 去勢より骨が細く、体型がやや小さめ
  • 去勢に比べ肉の変色が早い
  • 一般に肥育期間が長いので味がよい
    一方、去勢の肉の特徴は以下の通りです。
  • 肉のキメが粗め
  • 肉色は薄く変色が遅い
  • 日持ちがする
  • 筋が大きく厚い

③ 枝肉の格付
   各地の食肉市場で上場、売買される枝肉は、各市場に常駐する格付員(社団法人日本食肉格付協会の職員)により格付けされます。格付員は「畜産物の価格安定等に関する法律」(畜安法)に基づいて格付けし、結果は枝肉の体表に直接刻印することになっています。
   切断面の格付は、断面の胸最長筋(ロース芯)、背半棘筋及び頭棘筋をみて脂肪交雑を判定し、これらに加えて、バラ、皮下脂肪、筋間脂肪の厚さを見ることで「肉質」と「歩留まり」を判定します。歩留等級はよい順にA、B、Cの3段階、肉質等級は同様に5、4、3、2、1に区分し、両者を組み合わせて“A5”などと表示します。

枝肉3

 歩留まり等級は、以下の計算式で「歩留基準値」を求め、それによって決定します。
         67.37+(0.130×胸最長筋面積)+(0.667×バラの厚さ)-(0.025×冷屠体重量)-
         (0.896×皮下脂肪の厚さ)+2.049   *+2.049は肉専用種に限る
  肉質等級は、「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉の締まりおよびきめ」「脂肪の色沢」の4項目を5~1に区分し、そのなかで最低の等級が肉質等級になります。つまり、歩留まり等級がA、脂肪交雑が5と判定されたとしても、肉の色沢が4ならばA5ではなく、A4と格付されることになります。

枝肉4

 脂肪交雑等級は、下記のチャートで判定されます(B.M.S.No.= Beef Marbling Standard)。

枝肉5

肉の色沢等級は、下記のチャートによって判定されます(B.C.S = Beef Color Standard)。

枝肉6

 脂肪の色沢と質の等級は、下記チャートで判定します(B.F.S. = Beef Fat Standard)。

枝肉7

3 牛肉の可食部位
A. かた 
 よく運動する部位であるため、肉質はやや硬めであり、煮込み料理に向いています。
B. かたロース
 適度に脂肪がのっており、加工は薄切りにし様々な料理に利用します。
C. リブロース
  最も霜降りの多い部位です。すきやきやステーキに利用します。
D. サーロイン
 サーロインステーキとなる部位です。肉は柔らかく脂肪分は少ない部位です。
E. ヒレ
 最も運動しない部位のため、柔らかい肉質です。
F. ばら
 前足に近い「かたばら」と、後足に近い「ともばら」からなる部位です。いずれも濃厚な風味を持ち、牛
  丼や焼肉用として最適です。
G. もも
 赤身の肉で、カレーやシチューなどの煮込み料理に用います。
H. そともも
 ももより硬い肉質で、ひき肉にしたり、煮込み料理に用います。
I . らんぷ
 肉のきめが細かく、質のよい赤身です。脂肪分の少ないステーキ料理として用います。

枝肉8