阿寒グリーンヒルファーム

                                           阿寒グリーンヒルファーム
                               生産性向上に向け草地更新を積極的に展開

   釧路営業所は、釧路支庁管内1市7町村を担当エリアとし、営業6名とスタッフ2名で営業活動を行っております。事務所がある釧路市は、平成17年10月に釧路市、阿寒町、音別町が合併し、道内の市町村合併では初の「飛び地合併」し、新生「釧路市」となりました。
   今回は、釧路市阿寒町にて酪農専業の法人経営を営み、当社ユーザーである「(有)阿寒グリーンヒルファーム」の近年の飼養管理改善に向け、釧路地区農業改良普及センター中西部支所と当社研究農場、技術推進室とが協力して行ってきた取り組みについてご紹介いたします。

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○ 経営・生産概要
 (有)阿寒グリーンヒルファームの経営・生産概要は表1の通りとなっております。平成7年法人設立時は親類3戸での共同経営としてスタートしましたが、平成13年に2戸の構成員が退職された後は、鈴木 忠代表が経営を引継ぎ、雇用受け入れの体制となました。現在は鈴木代表、奥様のあけみさん2名の構成員と、9名の従業員(うち3名がパート)で牛舎作業、牧草収穫作業を行っております。

○ 飼養管理改善に向けた取り組み
1.「土づくり」「草づくり」
 グリーンヒルファームへの技術提供の一環として、定期的にグラスサイレージを分析していますが、平成15年頃から急に発酵品質が悪くなり、周産期病が多発し乳量が低下したため、その原因究明にあたりました。サイレージの品質が悪くなると、収穫作業の形態に原因を持っていきがちで、この時も鎮圧のかけ方が不良発酵の原因ではないかと考えられました(表2)。
  そこで、鈴木代表とサイレージ・牧草・飼養管理の各方面の専門家とで「施肥」と「草種」について議論し、畑を歩き回り「よく食べて害のないサイレージ」づくりに向け取り組みを開始しました。

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   サイレージ品質悪化の原因は、「過剰施肥」と「チモシーではなくシバムギが多い草地」ではないかと推測し、平成16年、160㏊全圃場の土壌分析を実施しました。そして出来上がったサイレージの品質を考慮して施肥計画を行い、これまで近隣の圃場に集中的に散布していたスラリーを均一に撒き、化成肥料も50㎏/反から30㎏/反に減肥しました。また圃場ごとに草種調査し、シバムギ、雑草の状況や更新年度を確認できる台帳を作成しました。サイレージ調製は、多少時間がかかっても水分調整に留意し、この年より当社乳酸菌アクレモを使用開始しています。当社もシバムギについて調査し、道内の牧草地でよく見かけるシバムギが、肥料分をよく吸収し、極端にカリ・センイが高く、NFC(非センイ性炭水化物)が低い草で、サイレージの発酵品質に、これほどまでに悪影響を与えるものだと再認識させられました。
   取り組み2年目の17年、サイレージの調整はパーティクルセパレーターで細断長を計測し、14㎜から9㎜に設定を変更しました。草の刈取りも1日の中でも糖分が上がり、水分調整しやすい昼から刈取り開始する徹底ぶりです。また、草地更新の計画を明確にし、草種の改良に取り組みました。草地事業にて15㏊と簡易更新で5㏊更新。18年も20㏊更新し、鈴木代表は「毎年20㏊草地更新していく」と、草地づくりに重点を置き、さらに今年から糞尿利用計画ソフト「AMAFE」をも使いこなし土・草の管理に力を入れています。
  当社も草地更新の必要性を感じ、完全更新と平行し、簡易更新の利用をすすめていますが、(有)グリーンヒルファームには16年、17年と簡易更新を実施していただいているところです。

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2.乾乳牛飼養管理の見直し
  前項のサイレージ品質改善と同時に、乾乳牛使用管理の見直しを図りました。まず、これまで1群で管理していましたが、前期と後期の群にわけ、それぞれのTMRメニューを作成、表3に示しています。
  特に低カル対策を徹底し、カリウムの濃度を抑え、採食量を上げるため、カッティングしたロールパックの他に「BIOバガス」を混合、さらにイオンバランスを調整するために、ミネラル類を併用し、指定配合と組合わせています。 また施設についても、寝起きをスムーズにできるようネックレールを改造。クランプと鉄管で、115㎝から125㎝に上げています。

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○ 今後の課題
1.   従業員の労務環境
  17年より従業員のために福利厚生の完備を行いました。現在の従業員が安心して働いてもらえるように、また今後「ぜひグリーンヒルファームで働きたい」といわれるよう働きやすい環境づくりを目指しています。
2.    初産乳量の増加
  表1に示していますが、現在の初産分娩月例平均が21ヶ月でこの数字は、哺乳ロボットの導入や離乳後から全ての牛にTMR給与を初め、子牛・若牛の早期増体に努めた結果であります。しかし、初産乳量の伸び悩みも事実であり、今後どう改善していくかを検討していくとのことです。
3.    シバムギとの闘い
   今回の記事の大半を草地作りの取り組みについての紹介になりましたが、鈴木代表いわく「道半ば」だそうです。草地の改良には時間をかけて今後も取り組んでいきたい。また、現在想定していない問題がおきても、各関係機関の協力を得て、早期の対処を心がけたいとの事でした。

   鈴木代表は今後の課題とは別に、「常に気をつけていることは、体細胞と生菌数。食の安全・安心の為きれいな牛乳を出荷することを心がけている。」とのことでした。酪農情勢は以前厳しい状況が続いておりますが、鈴木代表の言葉に「牛乳を搾る誇り」を感じました。当社としても商品・情報・取り組みが少しでもお役に立てるよう努力していきます。