蹄の疾病について

【趾間(しかん)フレグモーネ(趾間壊死桿菌症、趾間腐爛(ふらん)、股腐れ)】
(症状)

   趾間(内・外蹄の間)の皮膚に炎症が始まり、趾が発熱、痛みを伴って腫れます。腫れは、趾の前面中央と蹄球の上の皮膚から始まります。突発的な跛行(はこう)から肢をつくのを嫌がるようになります。症状が進むと、食欲減退などの全身症状が現れ、乳量も減少します。
(原因)
   趾間の皮膚の小さな傷からFusobacterium属、Bacteriodes属などの細菌が侵入し、炎症を起こします。放牧に慣れていない牛が小石・切り株などの多い牧野に放牧された時や、牛床の環境が劣悪である時に発症します。
(治療)
   早期の発見であれば、抗生物質やヨード系薬剤による治療で治癒します。
(予防)
   定期的な削蹄、牛床の乾燥・整備により趾間皮膚の損耗を防ぐように心がけます。

蹄を裏から見た状態

【蹄葉炎(急性蹄葉炎、潜在性蹄葉炎、慢性蹄葉炎)】
   蹄葉とは、蹄壁と蹄骨(末節骨)の間にある真皮の外側(蹄壁に近い側)の部分を指し、蹄の角質を作っています。ここの部分に炎症が起こることを蹄葉炎と言います。蹄葉部は非常に血管が多く、常に新鮮な循環血を必要とします。血液循環の滞りは蹄葉部の壊死を招き、角質が弱くなり、更なる蹄疾患に発展します。
(症状)
   急性蹄葉炎では、疼くような痛みのため歩くのを嫌がり、立位時にも四肢を集合させ背中を丸めた状態で落ち着きがありません。また、食欲も減退し、蹄に熱を帯びます。潜在性蹄葉炎は、明らかな臨床症状は示しませんが、蹄底角質の中に出血が認められ、部分的に黄色く変色していることで確認出来ます。慢性蹄葉炎は波状の蹄輪、蹄背壁の凹湾が特徴的で、蹄は横に平たく広がります。ホルスタイン若齢肥育牛に見られるロボット病(つっぱり病)は、慢性蹄葉炎の俗称です。
(原因)
   硬い凸凹道での歩行、狭い場所での繋留、過密な飼育、粗い、または滑りやすいコンクリート床での飼養などが急性蹄葉炎の原因となります。また、飼料の急変、濃厚飼料の多給、急激な増給などによって起こるルーメンアシドーシスも、大きな要因の一つとなります。ルーメン内で乳酸、ヒスタミン、エンドトキシンなどが生産され、これが蹄真皮に出血、炎症をもたらすと考えられています。高蛋白質飼料の給与も、蹄葉炎の原因とされています。

趾端の断面

【蹄球びらん】
   蹄球(蹄のかかと)は負重により蹄が受ける衝撃を吸収する重要な役割を持っています。健康な蹄球の角質は、柔らかく弾力性があります。
(症状)
   蹄球の角質表面にくぼみができ、それが多く繋がって溝となり、割れ目となります。また、角質がパイ皮のように何層にも分離することがあります。蹄球は全体的に丸みが無くなり、黒く変色、弾力性を失います。
(原因)
   湿度の高い、ジメジメした牛舎環境が原因の一つです。長期にわたり削蹄をしない場合や、平蹄、低蹄など蹄角度が小さい場合、過度の体重が蹄に掛かり、症状を悪化させます。蹄葉炎の影響で劣質の角質が形成されると、糞尿に侵入されやすく、蹄球びらんの原因となります。
(予防)
   定期的な削蹄で内外蹄のバランスを取り、蹄踵部に掛かる体重を軽減します。また、牛床を清潔にし、出来る限り蹄を乾燥させた状態を保つようにします。

【蹄底潰瘍(蹄底腐爛】
(症状)
   限局性の皮膚炎で、後肢の外側蹄底に多く発症します。蹄底蹄球接合部に円形の角質欠損部分が出来ることにより、明らかな疼痛を示し、突然、跛行します。
(原因)
   ①蹄葉炎に由来するもの。
   ②蹄球びらんに由来するもの。
   ③不適切な削蹄やコンクリート上での飼養による、蹄の平たん化。
   正常な蹄が硬い地面の上で負重した場合、地面に接するのは蹄壁の接地部などであり、蹄底の大半は体重を受けません。しかし、蹄底が平たんであると、そこに体重が掛かり、真皮に挫傷が起こります。
(予防)
   ①最低、年2回の削蹄実施。
   ②飼料給与メニューの見直しによる、ルーメンアシドーシスの予防。

【PDD(乳頭状趾皮膚炎)】
 海外では、内蹄と外蹄の蹄球上部の中間皮膚や趾間の皮膚に発生する病変として、趾皮膚炎、イボ状趾皮膚炎、イボ状皮膚炎、趾乳頭腫症、趾間乳頭腫症、蹄乳頭腫症などの病名で報告されています。日本では1993年に群馬県での発生が初めて報告されました。
(症状)
 後肢に多く発生する傾向があり、病変の多くは内蹄と外蹄の蹄球の上の中間皮膚に認められます。軽度の場合は、起立時に蹄球部を浮かし蹄尖(ていせん:爪先)で着地する傾向がありますが、病変が大きく、絶えずどこかに触れるような状態になると、跛行は重度となり、患部が着けなくなる程痛がります。病変部は発症初期には毛が逆立ち、表面は湿っていてマット状に絡み合っています。独特の腐敗臭を放ちます。
(原因)
 スピロヘータと呼ばれる細菌が感染源と考えられています。抗生物質治療が有効であることから、細菌性感染症であることは明らかですが、スピロヘータは培養が難しいため、学問的にはスピロヘータが原因菌であるという証明はなされていません。
(予防)
 PDDは伝染性であるため、早期に発見し、牛群に広まるのを最小限に食い止めることが重要です。フリーストールの場合、繋ぎ牛舎に比べて伝播が早いため、より注意する必要があります。そのためには牛を良く観察し、跛行の牛については、その原因をはっきりと突き止め、PDDが疑われる場合には獣医師による診断、治療を施すことが必要です。
(治療)
●局所噴霧
 治療と予防を兼ねて、パーラー内では搾乳後に、繋ぎ牛舎では牛舎内で園芸用ハンドスプレーなどを活用して患部直接噴霧します。抗生物質溶液としては、オキシテトラサイクリン、リコマイシンなどがあります。抗生物質以外ではイオン化硫酸銅製剤、次亜塩素酸ナトリウムなどがあります。噴霧期間としては、
  ①10日間連続
  ②最初の週は5~7日間、次の週は1日おきに3日間
  ③最初の週は5~7日間、次の週は病変のあるものだけ5~7日間
などがあります。
●蹄浴
 蹄浴槽のサイズは、長さ250cm、幅90cm、深さ15cm程度のものを設置します。パーラーの出口、牛舎の出口などに設置し、薬液の入った本浴槽の前に、水のみの前浴槽を設けるとより効果的とされています。薬液はオキシテトラサイクリン、リコマイシンなどを使用します。予防を目的とする場合、5~10%硫酸銅溶液が利用できます。
                               参考:続 テレビドクター(デーリィマン社)