食品製造副産物の飼料化

 食品工場から排出される食品製造副産物を飼料として利用することは国内飼料利用促進による飼料自給率向上の観点から注目されています。しかし、実際の現場では、

①飼料特性や給与量・給与基準がわからない
②乳成分が安定しない
③価格的メリットがあまりない(栄養成分量を乾物比較した場合)

などの理由から積極的な利用が進んでいないと思われます。また多くが高水分で変敗しやすくそのままでは保存や輸送が難しいのも一因です。食品製造副産物は栄養成分の偏りがみられ、例えば大豆を原料とする醤油粕は高蛋白質原料、豆腐粕は高蛋白質・高エネルギー原料、大豆皮は高繊維原料です。また同じ食品製造副産物であっても製造される工場が違えばその栄養成分は異なることがあるため新しい食品製造副産物を使用する際は必ず成分分析結果を基に飼料設計する必要があります。

<主な食品製造副産物の飼料特性>
 下表に代表的な(食品以外も含む)製造副産物の飼料特性、栄養成分を示しました。製造副産物は一部の栄養に偏っていることが多いため、飼料成分・特性をよく理解して使用することが奨められます。

表

<消化性と物理性>
 CP、TDN等飼料栄養成分値の数字のみではルーメン内での消化性が考慮されていないためルーメン内分解性、物理性や消化速度を確認する必要があります。食品製造副産物は加工により消化されにくく変性したものや反対に発酵や分解等により消化されやすくなったものがあります。例えば最近増加している緑茶粕や麦茶粕など茶飲料系製造副産物は製造途中の加熱工程により蛋白質が変性し、牛の利用性が低下していることがあります。

<蛋白分画の変化>
 豆腐粕などの高水分食品製造副産物は保存のためにサイレージ化が有効ですが、貯蔵中に蛋白分画が変化し溶解性蛋白質の割合が増加することが知られています。溶解性・分解性蛋白質はルーメン内で微生物の作用によりアンモニアまで分解され微生物体蛋白質へ再合成されますが、溶解性蛋白質の摂取量が多すぎるとアンモニアが余剰となり肝臓への負担が増加します。
 サイレージ化した高水分食品製造副産物を利用する際は飼料分析により蛋白分画を把握し蛋白質と炭水化物のバランスを考慮した栄養設計が必要となります。
(「MUNについて」、「蛋白質と炭水化物のバランス」の項 参照)

<炭水化物の特性>
 ビール粕や豆腐粕などの繊維質は粒度が小さくルーメン内ですぐに分解されるため、反芻に有効な物理的繊維は少ない原料です。そのため給与飼料のNDF含量のみで判断するのではなく牛を観察し、反芻回数・時間を調べることで物理的な繊維が足りているかどうかを見極めることが重要です。
 また穀類に多く含まれているNFC(でんぷん、ペクチンなど)はルーメン微生物にとって即効性のエネルギーとして重要ですが、食品製造副産物にはNFCが少ないという特徴があります。

図1

 図1は関東東海8都県協定試験の結果です。対照区は輸入乾草、穀類などで構成された一般的な給与メニューですが、副産物区にはビール粕、豆腐粕など食品製造副産物を多く組み入れた構成でNDF含量が45%と高く、反対にNFCは26.6%と低い値になっています。

図2

図3

 図2および3に乳生産性および乳成分の結果を示しました。副産物区の乳生産性が対照区と同程度であったことから高消化性のNDFをルーメン微生物がエネルギー源として有効に利用したと考えられます。また、食品製造副産物を使用する際に懸念される乳成分についても極端な低下はみられておりませんでした。

<食品製造副産物中の脂肪>
 脂肪は同量の炭水化物に比べ牛のエネルギー含量として2.25倍高く、乳量の増加、泌乳初期のエネルギー不足改善などに有効です。食品製造副産物の中にも粗脂肪含量の高いものが多くあり、豆腐粕や醤油粕、生米糠などが挙げられます。しかし、高脂肪の食品製造副産物を利用する際に

 ①原料や季節により粗脂肪含量の変動があるため定期的に分析値を把握することが重要です。
 ②特に暑熱時の不飽和脂肪酸多量摂取に注意が必要です。

 通常、不飽和脂肪酸を摂取してもルーメン内で水素添加されるため悪影響を及ぼしません。しかし、暑熱時は乾草やサイレージなど繊維の食いが落ちることで、ルーメン内pHが低下しやすくなります。ルーメン内が低pHの場合に不飽和脂肪酸を多く摂取するとトランス脂肪酸の生成量が多くなり乳脂肪合成阻害が起こり、乳脂肪率低下につながることが知られています。
充分粗飼料を食い込めている管理であれば問題ないのですが、粗飼料の品質がよくない場合や暑熱の影響で粗飼料が食い込めない場合は高脂肪食品製造副産物の給与量が多くなり過ぎない様に充分注意し、上手に利用する必要があります。