飼養密度と生産性

<乳牛の休息行動>
 乳牛は一日の約半分の時間を横臥して過ごします(9~12時間)。同じ状態で横臥していられる時間は、10~15分ほどで、それ以上になると自重により循環器障害を起すので、頻繁に姿勢を変える必要があります。一回当たりの横臥時間は60~80分ほどです。
 休息することによる利点は、①乳房中の血流が多くなることにより、飼料の摂取量、産乳量、子宮への血流量が増えること、②蹄へのストレスが少なくなり跛行が減ることが挙げられます。

<フリーストールの飼養密度と横臥時間>
 1998年に根釧農試で行われた牛床数と横臥時間について調査結果を表1に示します。この調査では、1頭当たりの牛床数が1.1以上、すなわちフリーストールの牛床数に対し、牛の数が9割以下だった場合、約2時間半横臥時間が増えたということです。

表1

 米国でも飼養密度が休息に及ぼす影響について幾つかの調査が行われていますが、それらをまとめると、120%以上の飼養密度では、休息時間は12~27%減少するという結論になります。
  表2はその中のひとつのデータですが、これでは飼養密度が109%になると、100%と比較して0.8時間横臥時間が減るという結果が示されています。

表2

<休息時間と乳生産性の関係>
 休息時間が増えると、乳房中の血流が多くなることにより乳合成が多くなります。休息時間が1時間増えることにより、1日の乳量が約1~2kg増えることが示されています(図1)。

図1

<飼養密度と採食行動>
 乳牛は一日の採食時間に3~5時間を費やし、9~14回採食し、一回当たり20~30分の時間を使うとされています。米国の幾つかの調査では、採食時間は飼養密度に大きく影響されることはないというデータが出ています。方や、一頭当たりの飼槽幅は45cm必要とされており、フリーストールでも3列の場合は、飼養密度が高くなると、採食時間に影響を及ぼすかもしれません。
 また、飼養密度が高くなると、採食回数が減少し、固め食いが多くなると言われています。

<移行期の飼養密度>
 移行期(分娩3週間前~分娩3週間後)の飼養密度は特に重要になります。この時期は特にストレスを受けやすく、ゆったりとしたスペースで飼養する必要があるからです。
 クロースアップ(分娩3週間前~分娩)群の飼養密度が高くなると、分娩直後の乳量が低くなったり、疾病が増えたりする可能性があります。出来れば、そのステージの飼養密度は80~90%が推奨されています。

<飼養密度と跛行>
 牛の足は硬い蹄という靴をはいた状態になっています。その中には蹄骨が葉状層と真皮層に包まれており、起立時間が長くなると、そこが炎症を起し、充血と陣痛を伴うようになります(負重性蹄葉炎)。例えて言うと、牛の足は人間がハイヒールを履いたような状態になっています。人間もハイヒールを履いて長時間立っていると足がむくんだりしますが、牛は一本の足に140kgという自重がかかっており足への負担は大きいものがあります。飼養密度が高くなり、起立時間が長くなると負重性蹄葉炎による跛行が増えます。